津和のり子

 そんなわけで 1977 - 1978 頃の『夜のヒットスタジオ』のオープニングメドレー映像を見まくる日々である。なぜこんな高画質映像が今流通しているかというと、CS で再放送されているからなんですね。もっとも全ての回が再放送されるわけではないらしい。中島みゆき出演回(1977. 12. 26)の OP はいくら探しても見当たらない。あと、連続して見ていると当時人気のあった歌手(新御三家、高三トリオ、沢田、布施、五木、森、小柳、和田、...)がやたら頻繁に出てきて、さすがに飽きる。他局で『ザ・ベストテン』(1978〜)が生まれた目的にはそういう人気至上主義の当時の歌番組に一石を投じるという意図もあったのよね。

 それでも、その一方で珍しい歌手も見られるのが楽しい。例えばこの津和のり子という人を私は全く知らなかった。上は夜ヒット初にしておそらく唯一の登場回(1978. 6. 5)で『曼珠沙華』という曲を歌っている映像。 OP ではちゃんとにこやかにメドレーを歌ったり順ちゃんのイジリにお茶目に反応しているけど、歌唱を聴くと完全にアングラ文化の世界の人だな。芸能人離れした迫力あるルックス、往年のシャンソン歌手を思わせる声量、スタジオなのに地べたに座り込んでギターを弾き語るスタイルが強烈に印象に残る。まあこの人本人が、というより、夜ヒットというメジャー番組とアングラの歌手との異色の組み合わせが印象的だったと言うべきかもしれない。
 ネットでこの人の情報を探しても、その後の消息などわからなかった。YouTube で他の曲がいくつか聴ける程度だ。中でも『蛾』(1976) という歌が私の心にスーッと入ってきた。言語感覚が面白い。しっとりした情感あふれる音の流れが心地良い。「暗い」と言って毛嫌いするのはもったいないと思う。