プロジェクト応募までの顛末

 締切の1ヶ月ほど前からひそかに応募のことを考えていた。今回は地域の自治体が運営する補助金で、国の補助金に比べたら額は小さいものの、3年間の研究には困らない予算がつく。所長や共同研究者 G、同僚 R と話しているうちに、このメンツで応募して当たれば皆にとって良いだろうという所長の提案があり、ちょうど良いので乗ることにした。とはいえ自分で書くからには自分のやりたいテーマで行きたい。が、同僚 R と話すうちに、自分の作るべき試料は彼の測定装置とは相容れないことがわかる。ベンチャー企業の G と話し合うも、早い話「額が小さすぎて興味がない」という意味のことを言われてやんわりと断られた。そういうわけで一旦は応募する気を失くした。

 その直後、グループリーダーから別のテーマで応募してみないかと勧められる。昨年から別口の予算で準備している研究テーマの一環となる。学内の締切まで2週間しかなかったが、共同研究者への打診はリーダーがしてくれ、彼らと会って打ち合わせるうちにだんだん面白いと思い、少なくとも最初のテーマよりは実現可能性が高いような気がしてきた。

 書類提出は2段階になっている。最初は研究の目的と社会的意義だけ作文した書類を出し、それによって1次審査が為される。1次を通った提案だけが、より詳細な研究計画を記した書類を提出して2次審査を受ける。合理的ですね。1次用の書類は短いとはいえ、全てフランス語で書かねばならない。頼りのリーダーが急用で何日か不在になったため同僚2名の助けを借り、最後は締切ギリギリになって仏文のチェックを自分では全くせず大学事務に提出。ところがパートナーとなる企業のトップのサインが必要だと判明する。急遽その企業に赴くも所長は留守。結局ある人がマネジメントしてくれて週末の間に所長のサインをもらうことができ、学内締切には遅れたが自治体の締切には無事間に合った。綱渡りの連続になってしまった。

 これだけ努力したのだから当たればいいなあと思う。異なるテーマに従事している研究者との橋渡しをしてくれたリーダーの働きがなかったら、応募は無理だっただろう。逆に考えると、日本にいた時にも、もっと積極的に異分野の研究者と会って話をするべきだったのだ。