原発は危険だ、と皆が知っていた

 以前話題にした、私が中3の時に使っていた英語の教科書(1979 年、東京書籍)の本文最後のページ。昨年末に教科書図書館に行った際にひそかに撮影してきた。今日になって写真を見直してみて驚いた。この単元はとある地球型惑星が滅亡するという SF 短編小説なのだが、滅亡の原因はなんと原子力発電所による放射能汚染や爆発事故だったのである。以下私訳。

 「私たちにとって原子力エネルギーの平和利用は簡単でしたが、自然との闘いに直面するとは予想できませんでした。あまりに多くの原子力発電所を作り過ぎたため、空気と水は放射性物質まみれになってしまいました。ひどい事故が何度も起こりました。ほとんどの人は病気になりました。たった今もテレビで、私の町の近くの発電所でまた事故が起こったと言ってるわ。聴いて! あの大きな音が聞こえる? このまま電話を切らないでね。すぐ戻ってくるわ」

 しかし彼女は、二度と戻って来なかった。

 チェルノブイリスリーマイル島の事故よりも前の 70 年代当時ですら、原発には危険性がつきまとうという事実を一般国民の誰もが常識として持っていたことに改めて気付く。この頃はこんな内容が文部省検定を通ったということに時代の違いを感じる。近年はおそらく各方面からの圧力ゆえ、原子力に批判的な記述が教科書に載ることはまず無くなっているのではないか。
 それもあってかあらずか、私たちの多くは昔は認識していた原発の危険性をいつのまにか心の中から消し去っていた、もしくは封印していた。だから今になって「安全だと言ったじゃないか」と政府や電力会社を責める資格は自分にはないと思っている。