フロリレージュ国際合唱コンクール Florilège Vocal de Tours

 日曜日。夕方に同僚 B から駅前広場のワインの祭りに行かないかと誘いが入るも、なんとなく億劫なのでことわった。そのあと部屋でのんびりしていたら、どこかからブラスバンドの生演奏が聴こえてきた。行ってみた。
 近所のレジスタンス広場に特設会場が設けられて、ステージ上で吹奏楽団が演奏している。ワイン祭とは無関係らしい。1時間ほどのプログラムが終わると、こんどはさまざまな合唱団が短時間ずつ交代でステージに上がって歌を披露する。広場は聴衆と出番待ちの合唱団のメンバーでいっぱい。お、浴衣姿の若者達がいるぞ。「すいません、日本の方ですね」と声をかけてみたら、相手も喜んで応対してくれた。その会話の中で知ったこと。

(1) 彼らはこの祭に参加するためにはるばる東京からやってきた大学生の合唱団だった。(最初、市内の日本人学校の生徒さんかと思った…)
(2) この祭はヨーロッパ6大合唱祭の1つとされている有名なものである。(町内会の夏祭りかなと思ってた…)

 さらに、あとでネットで知ったこと。
(3) 祭の名はフロリレージュ国際合唱コンクールという。毎年この時期にトゥールで開かれる。東京から来たその合唱団の名はハルモニア・アンサンブル
(4) 広場で行なわれていた催しはいわば後夜祭で、本番のコンクールはその前に何日かに渡ってちゃんとしたホールで開催されていた。(たしかに予選本選をこんな小さな広場でするわけないな)
 そして
(5) 昼にあったコンクール本選で、この東京のハルモニア・アンサンブルがなんとグランプリを受賞していたのだった! 僕との会話の中では彼らは受賞のことはおくびにも出さなかった。なんと謙虚であることよ。なお本合唱祭の 40 回の歴史の中で、日本団体の出場は3回目、グランプリ受賞は2回目。おめでとうございます。

 後夜祭のステージ上では米国、カナダ、インドネシアなどなど、12 の国の合唱団が次々に登場し、民族音楽、宗教曲、ジャズ、カントリー、前衛など、まったくバラバラなジャンルの音楽をアカペラで奏でている。この自由さ、リラックス具合は後夜祭ならではなのだろう。トリで浴衣姿のハルモニアがステージに上がると、客席からひときわ大きな拍手が沸き起こる。1曲目は宗教曲だったが、2曲目で期待通り、日本風味の強い土着的な漁歌のような曲をやってくれた。涙腺のツボを押されるね。グランプリを穫っていたことをこの時に知っていたらもっと感動しただろうけど。
 同僚 B には悪かったが、ワインを飲みに行かなかったおかげで、この合唱祭や日本の合唱団の世界的活躍のことを知ることができて幸せになれた。自分はワインより音楽が好きなのだ。いや両方あればさらに幸せだけど。来年はこのコンクールを最初から注目していよう(たとえ日本人が出なくても)。