『ラジ娘のひみつ(全2巻)』小坂俊史(2013-2015、竹書房)

 月〜金の夜 10 時から 90 分間の中高生向けラジオ帯番組のパーソナリティとなったカワイコちゃんタレントと、一緒に番組を作るスタッフらのシチュエーションコメディ。少人数のメディア発信チームが舞台、ということで『月刊フリップ編集日誌』と同系統の話とも言える。今回は主人公の娘さんのキャラに一ひねりしてある。普段は引っ込み思案でメルヘンチックな彼女だが、本番が始まると凶悪な毒舌家に豹変する二面性の持ち主だ。バイクに跨がると荒くれ野郎に豹変する『こち亀』の本田と同じようなものかな?

 1巻を読んだときは「設定に若干無理がある」「ネタが続くのだろうか?」「2巻で終わりそう」などと思ったりしたけど、2巻は予想以上に安定感があって面白く読めた。放送を続けてリスナーからも人気を集め、同業者からも一目置かれる存在感がヒロインに備わってきたからだと思う(その意味で、結末には「あれっ?」と違和感を抱いてしまった。あのようなサポートが必要ってことはまだ素人同然ってことじゃん)。あと、彼女の表情や仕草がバラエティに富んで魅力的になった。素のときに快活なオーラを振り撒いたり、逆に邪悪な顔のときに気弱な泣き笑いを見せたり。

 面白くなってきたところで、皮肉にも掲載誌の都合で2巻で完結。作者自身はもっと長く続けたかったと言うから、ネタは沢山あったのだな。もしかしたら表と裏の2つの顔が次第に融合していくという、二重人格ものの定番ストーリーになるはずだったのかも。なんてね。
 いつか特別編で、 10 年後とか 32 年後の、すっかり大御所 DJ と化した彼女を描いてくれないだろうか。

 ↑「月刊フリップの目次ページ」「サイダース特製 CD」と同様、作品中作品のイメージが膨らむアイテム。赤坂泰彦三宅裕司の番組を思い出す。見たい!(Kindle 版にはついていなかった! いつものことだ!)