Festival International de la Bande Dessinée, Angoulême (1/31 - 2/1) : Part 1

1/31 (土) 曇一時晴

 昨年と同じ朝7時半トゥール発の電車でアングレームへ。アングレーム国際バンドデシネフェスティヴァルである。駅の周辺に谷口ジロー氏の絵の大判ポスターがあちこちに貼られている。漫画祭でなく新刊の広告だが、この作家のフランスでの存在感の大きさを感じる。谷口氏については Part 2 でまた触れる。
 2回目で勝手はわかっているので、駅から徒歩で会場の切符売り場へ直行。窓口で財布を出していると、後ろから年配のご夫婦に話しかけられ「期間中通し券を 18 ユーロで買わないか? 私たちはもう帰るので」と打診された。1日券(15 ユーロ)を2日分買うより安い。乗った。

 1日で市中心にあるほぼ全ての会場を回った。街のあちこちの建物に BD の壁画が描かれているのが目についた。ブリュッセルみたい。昨年は無かった気がするけどどうだったかな。

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 以下、多少時系列を入れ替えつつ写真を載せていきます。

 Dédicace(サイン会)に勤しむ日本人漫画家を観察することを目標の1つに定めた。谷口ジロー氏を遠くから拝む。

 こちらは伊藤潤二氏。

 フミオ・オバタ氏。最近『Un thé pour Yumiko』という BD 作品が書店に並んでいるのを見てその存在を知った。最初はいつものように日本漫画の仏語版かなと思ったが、そうではなく、オリジナルは英国で出たらしい。プロフィールを見たら東京生まれだが 16 歳のとき英国に移住し、英・仏を拠点に漫画やアニメ畑で活動しておられる。ヤングキング等に描いている小幡文生氏という漫画家もいるらしいけれど明らかに同名別人であろう。

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 さて昨年はアジアパビリオンだったスペースを、今回は中国が一国で使っている。しかも結構人気があるようで長蛇の列(列が長いのは入館者チェックが厳重になったせいもある)。

 中国館で。NIE Jun 氏の絵(『ヴィンセント氏のヒマワリ』から)。かわいいね。

 中国館でカタログ(1 ユーロ)を買ったら、こういうケースに入れて渡してくれた。同館で展示されている漫画家の絵が一望できる便利なデザイン。左下隅の XIA Da 女史の作品がカタログ本文で「日本で唐史ブームを巻き起こした」って紹介されていて、何かと思ったらウルトラジャンプで連載中なんですね(『長歌行』)。

 台湾と香港の漫画は「リトルアジア」という別のパビリオンにまとまっている(余談ながら、今年は韓国からの出展は無い)。台湾の漫画家による『ちゃお』的画風の少女漫画が多数。2012 年夏に台北の書店を巡った時は気付かなかった。ここ2年で台頭してきたのか?

 もちろん個性的な作風の漫画家も多い。台湾の Sean CHUANG 氏の短編『家族の食事』の一場面。暖かみのある表情の描写が好み。(どこかの web サイトで全ページ見られたのだけど URL を失念してしまった あった。ここで読めます(中国語))

 昨年も思ったけど、日本館といったものはない。既に日本漫画はあまりにもポピュラーだし、「ジャパンエキスポ」という日本に特化したイベントが別にパリで開催されているし、あえてこの漫画祭で宣伝しなくてもよいという判断だろうか。しかし、今後さらに中国台湾韓国が欧州漫画市場のシェアを広げて行くのはほぼ確実と思う(程度問題)。コミックビームの岩井好典氏が 2007 年にアングレーム漫画祭を訪れた後、ブログに「日本も政府レベルでこういう催しに打って出てアピールするくらいの努力をすべき。さもないと諸外国に負けてしまう」という意味のことを書いておられた。個人的には、日本の漫画はワンパターンだと一部フランス人に思われているようなので、あえて売れ線に絞らずに、新聞4コマやらガロ系やら劇画やらエッセイコミックやら幅広く日本漫画を知ってもらう企画があってもいい。いかがでしょう。

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 宿は市中心部から 3 km ほど離れた郊外。バスに乗れば楽に行けたはずなのだが、夕食したあと店を出てバス停に向かう途中、財布が見つからずパニックになる。店に忘れたと思って引き返すうちに最終バスが行ってしまった。直後、財布はリュックに入れていたことが判明。オレのバカ! 結局、郊外のつまらない道を 40 分ほど歩いて宿へたどり着く。まあおかげでバス代1〜2ユーロ浮いてラッキーだったぜ(負け惜しみ)。
(2015.2.15 加筆)