論文が公開されました [Dual-PLD, STO -> BST epitaxial graded films]

Epitaxial composition-graded perovskite films grown by a dual-beam pulsed laser deposition method
J Cryst. Growth 380, 106 (2013)

 筆頭著者としての今年2報目の論文。ポイントは(1)2個のターゲットから同時に物質を蒸発させて膜を作る「デュアル PLD 装置」を構築したこと、(2)それを用いて「組成が厚さ方向に連続的に変化し、かつ面内格子が一定に保たれているような膜」を作ったこと。昨年秋に松山での応物学会で話したネタね。
 初稿を執筆して以後、実験結果の補充、ストーリーの修正、投稿先雑誌の変更などをしているうちに、1年以上を費やしてしまった。実験対象は前の VO2 / Pt と違って誰も作った事のない種類の試料で、ジャングルの中を分け入るような作業の連続。それがどんな役に立つのかという話も含めて、読者を納得させられるような書き方をするのが難しかった。最終的に投稿した J. Cryst. Growth の査読者の方は、厳しくも温かい目で建設的な助言と議論を下さったのが有り難かった。ただこの論文誌の投稿や出版システムには改善の余地があることも指摘したい。まあとにかく出せてよかった。
 いま酸化物エレクトロニクス分野で「組成傾斜膜」を作っている人はほぼ皆無だけれど、用途によっては有用な機能を実現する可能性があると思う。2つの領域の間にハッキリと境界線を引かずにグラデーションを設けることで、見えてくることがあるかもしれない。これ、薄膜工学だけでなく人文科学にも言えるのではないでしょうか。