鬼太郎・サスケ・どろろ

 高校の頃、近所の図書館に揃っていた漫画『サスケ』(白土三平)が好きでよく読んでいた。単なる忍術ものでなく、悪政に虐げられた農民が一揆を起こしてお上と闘う流れがじっくり描かれた社会派時代劇だった。ふと思い出してストーリーとかアニメ化の経緯とか調べているうちに、『どろろ』(手塚治虫)のアニメのオープニング映像を連想した。この作品も、単なる妖怪ものでなく農民一揆がじっくり描かれている。主人公もハダシで元気に走り回る頭身の小さいコドモ。なんだ、サスケとそっくりじゃん。時期もサスケのちょっと後。手塚氏って他の人がヒットを飛ばすと異常に対抗心を燃やす人だったから、『サスケ』の影響を受けて『どろろ』が生まれたのは容易に想像がつく。実際、『ゲゲゲの鬼太郎』(水木しげる)と『サスケ』の2作の要素をミックスして『どろろ』を構想した旨を手塚氏自身が明言していたという情報を見つけた。なるほど。

 漫画作品の発表時期を見ると、水木氏の『鬼太郎』は 1950 年代から紙芝居に登場し、最初の少年マガジンのシリーズは 1965 年から(途中半年ほどブランクがあるが)1969 年まで。『サスケ』の本編の連載は 1961 〜 1966 年。『どろろ』は最も短命で 1967 〜 1968 年だった。いずれものちにアニメ化などの機会に再連載がある。週刊少年サンデーでは『どろろ』の連載終了(1968 年 30 号)の翌週から『サスケ』の新シリーズの連載が始まっていますね。
 アニメでは『鬼太郎』『サスケ』が同時期に終わり、入れ替わるように『どろろ』が始まっている(1969 年 4 月)。鬼太郎とサスケとどろろが似てることは当時の子供みんなが抱いていた認識かも。

 現代にまで目を向けると、『鬼太郎』は5回くらいアニメ化されているし、『どろろ』は実写映画などにもなって息の長い作品になっている。しかし『サスケ』の新作は漫画も映像作品も一切なし。これはきっと新作アニメや映画化の話があっても白土氏が拒んでいるにちがいない。知らないけど。個人的にはサスケに一番愛着があるので、今の時代に復活したら面白いとも思わなくもない。でも 009 みたいに原作の面影が無くなるくらいなら、しない方がいいや。