35 年前の土曜マンガ

 コドモの頃『朝日小学生新聞』を購読していて、以下はかなりうろ覚えで間違いを含んでいるかもしれないけど、ある時期から毎週土曜に 1/3 ページくらいのスペースを占める漫画が掲載され始めた。作者は週代わりで、覚えているのは やまと虹一、クンタ・キムコ、湯浅キン(湯浅きん)の3名。クンタ・キムコなどというペンネームを使うくらいだから『ルーツ』が放送された 1977 年頃だね。このシリーズの終了と同時に『日記ちゃん』(はらたいら)が始まったとすると 1978 年 6 月頃まで続いたことになる(Wikipedia)。(追記:『日記ちゃん』は別枠であった。この連載開始後も土曜日のシリーズは続いていた。2013.1.7)

 やまと虹一が描いていたのはちょっと『ヤダモン』の趣のあるわんぱくな子供怪獣が主人公のギャグ。絵柄が整っていてギャグからストーリーまで器用にこなせたので、朝小では他にも最終面の枠に連載したりいろいろ重宝されていた。のちに『プラモ狂四郎』で広く知られるようになる。クンタ・キムコという人の作品は『ぼくはキューピッド』という題だった。線の強弱が大胆で、劇画タッチのギャグ。‘弱り顔’が特徴的だった。関連あるかどうかわからないけど『プチ・スピルー』のような BD 作品と描線が似ている気もする。のちの木村知夫(『Let's ダチ公』)である。

 湯浅キンは他に比べると地味だったけれども僕は好きだった。最初は3匹の動物が主人公の股旅もののギャグ。それが終わると少しストーリー性の濃い、昭和初期の田舎の村が舞台の『風のカンベエ』という作品が載った。細い線の絵柄は端正だが個性的で他のどの漫画にも似ていない。全体に素朴で飄々とした味わいがあり、純和風の筋肉質の男や楚々とした娘をサラッと描写した絵が印象に残っている。
 その後『マンガ少年』や『ガロ』にも描いたらしいが、僕はまったく見ることがなく、幻の作家のような存在になっていた。が、今日、ツイッターで湯浅ヒトシと同一人物と知って思わずああっと声を上げた。「大前田リン=前田由美子」を知った時に匹敵する驚きだった。そうか湯浅均か。言われてみれば『耳かきお蝶』『けずり武士』の端正な絵柄や飄々とした味わいと共通点がある! あの朝小の土曜枠の中で一番地味で、その後消えてしまったと思われた彼が、今また読者の支持を集める作品を送り出している。本当に嬉しい。
 懐古モードに入ってしまった。35 年前の朝小(縮刷版とか)、どこかで閲覧できませんかね。