Fomblin oil

 ガガガガガと大騒音を立てたロータリーポンプ (RP) を分解。この作業は大学院生時代以来だ。
 不具合の原因は、回転運動に従ってローター芯部から出たり入ったりするはずの褶動板が、タール状の物質で固定されてしまっていることのようだ。完全に分解して全部品を清掃すれば治りそう。どうやらメーカーのお世話にならず、1€も払わず解決しそうで、ホッとした。

 さて、何故タール状のものが生成されたのか。以前この RP で使っていた鉱物油の残渣と、ある時から使い始めたフォンブリン(仏語発音はフォンブラン)という商品名のフッ素系油が、ポンプ内で反応を起こしてできたものらしい。内部の至るところにワニスのようなコーヒーゼリーのような物質が付着しているのはちょっとした見ものだった。
 日本にいた頃は RP の油といえば鉱物油しか知らず、Fomblin なんて聞いたこともなかった。これを強く奨めた当グループリーダーの話では、化学的に安定であり、鉱物油のように定期的に交換する必要もなく、特に我々のように酸素をプロセスガスに使う場合には最適であると。その割にはこのオイルを RP に使っているというグループの話を聞かないのが不思議だな。

 使い始める時に代理店に注意点を訊ねたところ、
「もし以前に他の油を入れたポンプにフォンブランを使うなら、まず最初にポンプをフォンブラナイズして下さい」と当たり前のように言う。
「ちょ、ちょっと、フォンブラナイズって何ですか?」
「古い油を抜いた後、フォンブランを少し入れてポンプを運転させて、また中の液体を捨てるんです」
 内部をゆすぐわけね。言われた通りにしたら、たしかに乳白色のフォンブランに濃い褐色の鉱物油が混ざって出てきた。それでも古い油は完全には除去できていなかったらしい。昨年にも日本から持ってきた RP が立て続けに2台故障したが、今にして思えば少なくとも1台は今回と同様の原因だったのではないか。

 いま「fomblinize」で検索してもほとんどヒットしない。この手のトラブルに悩まされた人はいないのだろうか? 製造元もよくわからない。謎の多いオイル。
 Fomblin は高価だけれど、たしかに長持ちするので値段分の価値はある。ただ使うのに注意が必要だということはわかった。Fomblin を入れる前にポンプ内部に付着した古い鉱物油を取るには、できれば分解清掃した方がよいかもしれない。あるいはその上でさらにフォンブラナイズすることが求められているのかも。

 以上、将来「フォンブリン」「ロータリーポンプ」で検索してくる方のために。