『テルマエ・ロマエ』の歩み L'histoire de Thermæ Romæ

 近所の書店の店頭に『テルマエ・ロマエ』(ヤマザキマリ)のフランス語版1・2巻がお目見え。作品専用の展示オブジェが用意されているあたり、出版社の意気込みが感じられる。ちょうどパリで開催中の国際書籍見本市 Salon du Livre の特別企画で招待された日本人作家 20 名の一員としてヤマザキ氏も来仏中という。知名度がフランスでも一気に上がるであろう。
 ところで店頭のオブジェを見てちょっとびっくりしたのは、6巻までのフランスにおける発行予定年月が明記されていること。日本でもまだ4巻までしか刊行されていないのに、だ。このオブジェのデザインからして、どうも全6巻で完結しそうな雰囲気を感じる。作者のブログ(2012 年1月 12 日付)にも

一話完結型じゃなくなったり、さつきという人物の登場により、「え!?何で!?」という声が多く寄せられますが、テルマエは決して長編ラブコメに方向転換したわけではありません。
でかいクライマックスに向けて必要な「溜め」の期間・・・・とでも言っておきましょう。

という記述があり、6巻くらいで結末を迎えてもおかしくはないと思わされる。わかんないけどね。

 店頭のオブジェによると仏語版の第6巻が出るのは 2013 年3月だそうだ。いったい『コミックビーム』誌への掲載、日本語版コミックスの発行、そしてフランス語版コミックスの発行の相互のタイミングはどうなっているのだろう、と疑問に感じて、2008 年の第1話の雑誌発表から 2013 年の仏語版第6巻発行までのタイムラインをまとめてみた(「今」より未来については、雑誌掲載と日本語版コミックス発行時期は推測)。ついでに作品に関係する出来事のいくつかを併記し、本作が世の中に与えたインパクトを振り返ってみたい。


 日本語版と仏語版のコミックスの発行間隔の違いが顕著だ。仏語版を急いで出そうとしているのが伝わってくる。まさか仏語版6巻を日本語版6巻より先に出すことはないと思うので、ギリギリ同時発売としても、1ヶ月の猶予もないかなりハードなスケジュール。たとえばヤマザキ氏が『ビーム』に最終回の原稿を執筆するのと、仏語への翻訳作業が、同時進行で行なわれたりするのだろうか。忙しさに身体を壊して休載なんてことがありませんように。
 あと、2009 年 11 月に日本で第1巻が出て以来、2010 年前半に急速に本作が巷で話題になり絶賛を受けた過程を改めて認識した。本来なら1回の読み切りで終わっていたはずの作品を、このようなメガヒット作にまで育て上げた奥村氏の嗅覚才覚には、やはり敬服ざるを得ない。