ラザフォード後方散乱(RBS)

 昨日はオルレアンへ日帰り出張していた(8月に訪ねた所とは別の研究所)。テーマDの試料の RBS 測定をしてもらったのだった。RBS は薄膜試料の深さ方向の組成変化が非破壊的に高精度でわかる手法。7月から計画し、先方に共同研究として話を持ちかけ、ようやくこの日の本番を迎えた。
 自分の試料を RBS 測定するのは4年ぶり。前職場にも RBS 装置が備え付けられていたので、日本にいたときには割と気軽に使っていた。しかし実のところ RBS 装置とは機関車みたいな大型の粒子加速器を伴うもので、国じゅう見渡しても数えるほどの台数しかないのだ。日常的に使える環境にいたのは非常にラッキーだったのだ。その前職場の装置も、その後故障して廃棄が決まった(訂正:廃棄の可能性もある)と聞く。残念。
 オルレアンの RBS 装置は CNRS の共同利用施設ということで、前職場と違って2ヶ月くらい前から使用申し込みをする。加速電圧は前職場のものよりも低いけれど、強いビーム電流が安定して得られるのがとても助かった。測れるだけ測ろうとダメ元で持って行った 15 枚の試料が全て1日で測定できた。おかげで自分の膜の実態がいろいろわかった。興奮と幸福感が蘇ってくるのを感じる。薄膜屋にとって強力なツールであることを再認識。自分にとって RBS は生涯の相棒だと言っても過言ではないな。

 今日は、オルレアンの研究者さんに教えてもらったドイツ製のシミュレーションソフトをダウンロードして、昨日のデータのフィッティングを始めた。ようやく使い方に慣れてきたところ。でも前職場で使っていた日本製のシミュレーションソフトも使いづらかったけど、これもそれほど使いやすくはない。各層における複数の元素の存在確率の合計が1になるように数字を入力するところとか、自動で計算するようにしてくれないかな…などと。