停電パージバルブ

 通常、真空チャンバーの排気系は高真空ポンプ(例、TMP)とそのバックを引く1次ポンプからなる。1次ポンプにロータリーポンプ (RP) を使っている場合、もし停電が起こると RP のオイルがフォアラインを通じて より真空な方へ、つまり高真空ポンプ → チャンバーへと上がって行き、汚染してしまう。そこでフォアラインに関して取りうる方針は4通り考えられる。

 1) 電源停止時にフォアラインが自動で遮断されるような弁を設ける
 2) 電源停止時にフォアラインに空気 or 窒素が自動で導入(パージ)されるような弁を設ける
 3) 1) と 2) の両方の機能を持った弁を設ける
 4) 停電が起きたらその時はその時、と考えて何も対策を講じない

 我々のチャンバーでは 3) のための電磁弁を1年前に買ったが満足に動かず、そのまま放置して結果として 4) の状態が続いていた。そこへ不慮の電源ケーブルショートが起こり、オイルが上がってチャンバー内が汚染されてしまった。不謹慎ではあるが、もしこのチャンバーを日本という国に例えると、今回のトラブルは福島原発レベルの事故かもしれない。自分の危機予測の甘さによるものだ。東京電力姉歯建築士を批判できない。

 遅ればせながら今日いくつかの真空装置を調べて把握したところ、多くの装置は 2) の対策をとっているようだ。少ないながら 1) のケースもある。3) のケースは聞いたことがないことに今更ながら気付く。弁の構造の複雑さ(=コスト)はもちろん 2 < 1 < 3 となる。なんだ、1年前に買ったバルブは誰も使っていないような過剰な機能を持った品だったんだ…。せっかく買ったので使えるようにしたいけれども、まだ見通しは立たない。