国会図書館での閲覧・ハイライト

・『星から来たスパイ』リューテナンX著、磯村淳訳、御厨さと美画(1977 小学館
 先頃原作を読んだ名探偵ランジェロシリーズ "Langelot et le Satellite" の邦訳。ただ仏語版と日本語版では巻の順序が入れ替わったり題名が直訳でなかったりするので、表紙を開くまでは本当にこれが自分の読んだ巻に相当するのか確かではなかった。幸い当たりだった。
 原作を先に読んでから邦訳に接する体験は新鮮だ。やはり小説部分は読みやすくアレンジされ、加えて劇画もついているのでスルスル読めるね。セリフ回しなどには原作・日本語小説・日本語劇画の3通りが存在するわけで、訳者や劇画家の解釈を味わうのは面白い。天才数学者ニッキー嬢の造形がちょっとうりざね顔だとか、カフェのテーブルにクロスが敷いてあるとか、自分の思い描いた絵と違う!と感じることもある。一方、印象的な台詞のやりとりの持ち味(「宇宙船を動かせないなら国境を動かせばよろしい」など)が良く再現されていると嬉しくなる。原語版 → 邦訳版の順で他の作品も読んでみたくなった。

・湯浅きん
 国会図書館に『朝日小学生新聞』のマイクロフィルムが所蔵されていることを知り、最近は同館を訪れるたびにそれで往年の湯浅きん(=湯浅ヒトシ)作品に再会しているのだ。以前話題にした動物股旅ギャグは『3びきの不思議な旅』(1979.7.7 - 1980.3.22) という題だった。題は忘れていたけど、面白いもので最終回の展開などは1コマ目を見た瞬間に脳裏に蘇って来た。その終了後に間をおかず『風のカンベエ』が始まる (1980.4.12 -)。現在第7回まで読んだところ。ストーリー物で、人物の描き方に『耳かきお蝶』『けずり武士』の面影が既に感じられる。自然に囲まれた山村や和風の少年少女の絵がいいなあ。舞台は明示されていないがおそらく作者の地元群馬県が想定されているに違いない。
 ついでに『マンガ少年』に湯浅作品が掲載された号を探し、同館で閲覧可能だった 1980 年 4 月号を見てみる。目次を見たら湯浅氏の名前が無くて焦ったけれど、実は手塚治虫氏の原稿が半分落ちたための代原だったと判明。内容は『3びき』に登場したような牧歌的な動物キャラが殺し合いを繰り広げるスプラッタギャグだった。時期的には『3びき』の連載中に並行して描かれたことになる。残虐描写のできない小学生向け作品にストレスが溜まっていたのかしらん。
 この号には他に、御厨さと美が手塚アニメを漫画化した『火の鳥 2772 愛のコスモゾーン』の最終回、藤子・F・不二雄ジュブナイル SF の一編『街がいた!!』、大友克洋の初期の短編『SOS! 大東京探検隊』などが掲載されていた。改めて『マンガ少年』は面白いな。当時なんで読んでいなかったんだろう!