戦争の語り方

 『刑事コロンボ 魔術師の幻想』(1976)を観て思ったのだけど、1970 年代に作られたフィクション作品には、ときどき不意に第二次大戦を背景にしたエピソードが挟まるね。「不意に」がポイントだ。普通に現代劇として始まったかと思うと、主人公の学校の先生が戦争未亡人だったり、刑事や犯人が元兵隊や戦災孤児だったりすることが判明し、重いメッセージを孕んだ話と化すパターン。軽快に始まって重く展開する落差は作劇術としてうってつけだ。
 「ときどき」という頻度も重要。これが 70 年代より前の作品だと、登場人物は戦争の影をひきずって当たり前だったし、80 年代以後の作品は現代劇の背景として戦争を扱うことが少なくなる。70 年代には読者視聴者が戦争を思い出すと粛然とする空気がまだあったのだろう。
 昨今の作品は戦争を扱っても、世代がかけ離れているせいか今ひとつリアリズムに欠ける気がする。戦争の何たるかを若い世代に伝えるには、今の映画よりも、BS などで放送される 70 年代の TV ドラマや映画が適していると思う。当時、ドラマ製作には既にビデオが導入されていたから、画質もそれほど古臭くないし、現在重鎮の俳優の若かりし頃の出演作だったりすると今の子の興味も引くだろうし。そう、『男たちの旅路』のことです。まさに BS プレミアムで再放送中だと聞いた。観たいなあ。( ← 結論)