NHK は大丈夫か?

 籾井勝人 NHK 新会長就任会見(25日)

 尖閣諸島竹島など領土問題について、国際放送で「明確に日本の立場を主張するのは当然。政府が右ということを左というわけにはいかない」
 従軍慰安婦問題について「戦争をしているどこの国にもあった。ドイツやフランスにもあったでしょう」「なぜオランダにまだ飾り窓があるんですか」
 記者から会長会見の場であることを指摘されると、発言を「全部取り消します」(朝日、2014.1.26

 信頼する NHK が堕落しつつあるさまを目の当たりにして、言うべき言葉が見つからない。先に選任された経営委員会の人事といい、局が安倍カラー一色に染まってしまった。
 会長就任会見だけで問題発言がてんこ盛りで、適性が疑われるが、中で特に危惧するのは「右を左と言えない」発言。政権の意向を NHK の報道に反映させようという姿勢を隠そうともしない。ジャーナリズムは政府を監視し警鐘を鳴らす役目を担うべきなのに。この体制では、原発事故検証ドキュメンタリーや市民運動を描く社会派ドラマのような意欲的な番組制作の系譜は、断たれてしまいかねない。

 なぜこういう人物が会長になれるのかと不思議に思って、改めて調べてみた。
 会長は経営委員会(12 名)が選出する。その経営委員会は首相が(両議院の同意を得て)任命する。つまり国会が一党独占である限り、やろうと思えば政権が NHK の経営委員や会長の人事を意のままにできるのだな。
 しばらくは会長職は内部昇格だったが、一連の不祥事を受けて 2008 年から外部招聘を基本とするようになった。しかし奇妙なことに「一連の不祥事」の中には、NHK安倍晋三の意向を受けて番組を改変していた一件が含まれている。

 2004 年中に相次いで発覚した一連の NHK の不祥事を巡って、最高責任者として信頼回復と NHK 改革に尽力する旨を表明していたが、NHK 番組改変問題の内部調査で放送前に安倍晋三と面会していたことが発覚、視聴者はもとより日本放送労働組合や政界からも辞任を求める声が強まり、2005 年 1 月 25 日付けで NHK 会長職を辞任した。(Wikipedia 海老沢勝二

 十年前には政権の意向を反映したらまずかったのに、今は反映しないといけなくなったらしい。

 NHK の自浄作用が働くことを祈っている。下々の職員に会長の解職請求権があるのかどうか知らないけれども、首相や会長の声に左右されずに番組を作る矜持を保ってほしい。