避難、他

 久々に会う教授 M が僕のオフィスにわざわざ来て、地震のお見舞いをしてくれるとともに、東北大にいる彼の同業者に連絡をとった話をしてくれた。本人は無事だが実験装置が冠水したという(調べたらその研究室は星陵キャンパスにある)。加えて「何か我々が助けてあげられることはないか」とまで言ってくれて感激した。
 一方で、いつも会う教授 L は僕の顔を見て「カタストロフ、カタストロフ」と面白そうに繰り返した。精神が幼稚だ。「ええ、日本でカタストロフが起きています。だから何ですか?」と言い返したかったがそれをしたら人間関係が決定的に悪くなってしまうだろうな。でもかつてこの人と話して気分が良くなったことは一度もない。教授にもピンからキリまでいる。

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 原発事故の報道の頻度や内容を見ると、2〜3日前に比べると緊迫度が低くなってきた感じがするけれど、容器内の水位や放射線の広がりなど具体的な状況は何とも言えない。放射線被害を避けるために東京の人も西に避難したほうがよいという主張を見受けるようになった。僕の知り合いの1人も、僕の家族をフランスに呼ぶべきだと僕に勧めて来た。日本人はこの危機がいかに深刻か認識していないとも。どうすることが正しいのかわからない。

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 同僚がラジオで聞いた話。我々の共同研究先の某半導体企業が、自社の経営見通しを「今期は減収になるだろう」と明かしたとのこと。理由は、地震の影響で日本からのシリコンウェハーの納品が滞るから。そうだ、世界で使われるシリコンウェハーの大部分は日本メーカーが生産しているんだった。日本だけでなく世界中が日本の復興を必要としている。