曇時々晴

 ガス配管最終日。仕上がりには満足。
 しかし技師たちが帰った後、私の私物のモンキーレンチが消えていることに気がつき、一気にやる気が失せた。技師が自分たちの工具と一緒くたにして持ち帰ったに違いない。じつはこれまでも彼らが来て作業したあとは実験室にあった細かいもの(ペン、はさみ、粘着テープなど)が消えていることがあった。クライアントの私物を勝手に使って、しかもガメて行くのがフランス流なのですか? 勝手に使うだけでも日本では考えられん。こちらは何もない所でどうしたら早く仕事を進められるか考えた末、必要と思うものを一つ一つ(ほとんど自腹で)揃えてきたのに、その努力を外部の人間にこうたやすく踏みにじられると凹むわ。
 でも考えてみたら以前から感づいていたので、技師が作業する前に予防策をとるべきだったのだが、自分は工具箱の蓋を閉めることさえしていなかった。平和ボケしていると言われてもしかたがない。
 とりあえずできる作業を再開するも、小さな不運がいくつも重なり、何も完成させられなかった。モンキーレンチのショックが尾を引いて、細かいことがいちいち癪に障り、皆が自分の邪魔をしているような妄想が湧く。私は人生を楽しむべきだ、もう仕事のことはキッパリ忘れようと6時前に退勤し、市内のギター屋を巡る旅に出たのだった。