都会派

 久々に製膜2枚。並行して論文読んだり。良い天気ですな。(‥と思ってたら大雨になりました)
 ◇ ◇ ◇
■『アニー・ホールウディ・アレン監督(1977 米)

 大学時代、映研の面々で『カメレオン・マン』を見に行った。内容は身につまされるもので、メッセージは伝わった気がしたものの、映画として楽しめたとは言えず、以来自分からアレン監督(と呼ぶのもなんとなく変だけど)の作品に接触することはなかった。
 今、本作を見たらそれなりに楽しめた。変かもしれないが、福満しげゆきの漫画を読んだ時の面白さに近かった。主人公は、神経症気味で冴えない風体のコメディアン、アルビー(アレン)。彼が NY でアニー(ダイアン・キートン)と出会って恋に落ちて、やがて別れて‥という話。2人とも「自分を好きになれない、でも他人からは認められたい」という厄介な性格だから、まあうまくいかないよね。「僕を会員にするようなテニスクラブには入会したくない」といった台詞が印象に残った。その気持ちなんとなくわかる。

 現実の風景からいつのまにか空想場面に入る構成が面白い。妄想や欲求が暴走しがちなアルビーの性格がうまく現れている。普通に芝居していたかと思うとアルビーや周辺の人物がカメラに向かって語り始めたり、関係ないはずの通行人たちがアルビーの事情を知っていて意見したり、有名評論家の噂をしただけでいきなり本人が現れたり。こういう遊び心ある表現は好きだ。

 ただやはり、これがアカデミー賞受賞作品だと聞くと「そうか?」という感じではあった。自分にとってウディ・アレンは昔から「面白い変なおじさん」だけど、傾倒する対象ではないのだな。作品中、ビバリーヒルズにやってきたアルビーが、カリフォルニアの陽光と整ったきれいな町並みに拒否反応を示すシーンを見て、理由の1つがわかった気がする。ウディ・アレンが「都会派」と称される所以は、単に都会にしか住めない人種ということか。そんな自由度の低い都会派にはなりたかねぇわな。