寺田寅彦

 9/20(火):出勤。ミーティング。学会を聴いた影響か、メンバー達の仕事ぶりにいつもより多くハッパをかけた。さっそく自動測定装置Bの使用開始。夜、雑誌会。基板の前処理して装置に導入。疲れてしまい、やっぱり職場泊。
 9/21(水):試料交換して昼に一旦帰宅。必要があってDVDプレーヤでDVDのバックアップを作る操作を調べる。夜から製膜。深夜までかかった。さすがに今日は家で寝た方がよいだろう。

■『寺田寅彦の生涯[改訂新版]』小林惟司(1995 東京図書)
 読了。東大教授兼理化学研究所主任研究員の物理学者にして随筆家、はたまた俳諧もよくし楽器も嗜み絵筆も取るという希代な才能の持ち主、寺田寅彦 (1878-1935)。本書は寅彦の足跡を可能な限りの資料を駆使して調べあげ、その人間像を浮かび上がらせている。寺田寅彦というと最初は「茶碗の湯気」「ネコの斑模様」といった面白いテーマに取り組んだ一風変わった研究者という印象があったのだが、じつは決して異端者ではない、学界の中でも重鎮として存在感を示していた人であり、その科学的な考え方が周囲の学者と比べてもきわめて鋭く正統的なものだったことを本書を読んで認識した。
 最近たまたま寅彦の随筆集を読んでいて、昭和十年の一年間だけでも夥しい数の随筆を書いているのを散見し、なんというアクティブな人だと思っていた。驚いたことにこの年は彼が病気で亡くなる年であり、また私生活で様々な問題に悩まされていた年でもあったのだった。そのような暗さを背負いながらあの飄々とした味わいのある文章を量産しつづけたとは。人間として教えられることがあまりにも多い。「多趣味な科学者」は私の憧れでもあるが、今の私は寺田寅彦の足元にも及ばないことを痛感する。