2回観よ!

 録画して、少しずつ何回かに分けて観ていた『千と千尋の神隠し』を最後まで観る(2回目)。最初に映画館で観た時の印象は「『なぜ?』が多過ぎてついていけん」という否定的なものだったが、意外なことに2回目は作品世界にすうっと入って行けた。説明不足や、声優の声がこなれていないといった難点は、1回目の時に自分の中であらかた抽出してしまっていたので、今回は感覚的な部分をストレートに享受できたのだな。薬湯の匂いの染み付いた湯屋の雰囲気、静かな水面を電車で行く少女の決意と不安の入り混じった感情など、今更だが画面から感じ取ることができた。あまり目立ってはいないが久石譲の劇伴も上質で、感情移入を大いに助けている。
 「よく考えろ」という意味の "Think twice."という英語表現がある。1度観て(読んで)つまらんと思った作品も、2度目に観た(読んだ)時に初めてその面白さがわかるものかも。かといってすべての映画を2回観ていたら人生いくらあっても足りないですが。

 一方、一部の解説本で行なわれているような、映画に登場する記号を読み解くような作業は、私はこの作品についてはあまりやろうと思わない。個々の記号が全体の流れと無関係に存在しているように思われるので。『千と千尋』は叙情詩ではあるが叙事詩ではないというのが個人的意見。
 記号を読み解くというとなんだか堅い作業のようだけど、それは作品全体を理解する技術として重要なんだと、この半年間『ほぼ日』の新選組!コラムを読み続けてわかった。人物の表情や小道具、ライティングにさえも、作り手のメッセージが込められている。繰り返し観て(読んで)その都度新しい隠しメッセージを発見するような作品はやはり丁寧に作られていると言っていい。今年出会ったそういう作品は『新選組!』と『夕凪の街 桜の国』(こうの史代)であった。