スコシフシギ

 朝と晩の2回職場に行って測定装置の試料交換をする。その間はビデオを見つつ、洗濯しつつ、部屋の掃除をしつつ、FM番組のエアチェックテープの編集をする。精神のベクトルは少しは上を向いていたと思う。

 藤子・F・不二雄のSF短編集を読む。作品の多くは再読。彼のSFには救いのないドライな結末の作品も意外に多いが、本書収録作品には「カンビュセスの籤」「宇宙人」「老年期の終り」など読後に余韻の残るものが選ばれている。シンプルながら確かな絵と、練り上げられた台詞がいつもながら見事。そして底に流れる歴史観・人間観のなんという雄大さ、正しさ、美しさ。改めて感服する。自分は古今東西のSF小説を読みあさる人間ではないが、その理由の一つは若い頃に藤子F先生のSF作品群と出会い、もうこれ以外は要らないと感じたからかもしれない。名作だ。