超人

 レニ・リーフェンシュタール女史の訃報を目にして、ああ‥‥と思わずため息をつく。この人もやはり不老不死ではなかったのだな。
 若い頃はダンサーや女優として活躍し、やがてナチスに見い出されて映画監督としてオリンピック記録映画を撮り、戦後は政治的理由により表舞台から消えるも70歳近くになって写真家として復活。波瀾万丈という表現がこれほど相応しい人生もないな。10年くらい前に東京で彼女の回顧展を見たけど、90歳になってもスキューバダイビングの日々を過ごしていると聞いてぶったまげ、とても年齢には見えない若々しい体型と肌のツヤと行動力に驚愕したものだった。
 復活後はアフリカの未開部族とか、果ては海中の生物に撮影対象が移って行ったのを見ると、冷遇されたせいでだんだん人間(先進国の)が嫌いになっていったんだろうな、と思う。天賦の美貌と才能がもたらした光と影の、しかし最後まで常人の何倍も活動的な人生。こういう人生があったことが驚き。