不測の事態

 昨日のセッションではちょっとしたハプニングが起こった。ある講演者が、講演開始時刻になっても現れなかったのだ。
 件の座長先生が演題、講演者名を読み上げても、登場する気配が無い。こういうケースはきわめて珍しい。座長先生、悩んだ末、しかたがないのでこの講演の時間は休憩にしますと宣言した。

 ところが、その宣言の1分後くらいに、息せき切った講演者が到着した。ずっと走って来たようだ。
 遅刻を詫びながらも、講演をさせてほしいと頼む講演者。今始めればそれほど予定時刻をオーバーしないで済む。
 しかし座長は毅然としてその頼みをはねつけた。
 「それはだめです。もう休憩を宣言してしまったんだから。休憩だと思って外へ出て行った人もいる。あなたの講演はこのセッションの最後に行ないます。聞きたい人は残って聞く、そういうことにします」

 座長のこの処置はまったく正しい。その講演を知らぬ間に聞き逃してしまう人が1人も出ないようにするには、こうするしかない。本来講演者は時間に余裕を持って会場でスタンバっていなくてはならないもので、遅れて来たのは100%講演者に責任がある。
 だがもし自分が座長だったら、ああどうしよう、すぐ休憩にせず3分だけ待てばよかったなあ、やらせてあげたいなあ、でも出て行った人もいるしなあ、とパニックになるかもしれない。その点この座長先生は、自分のとるべき唯一の正解がなんであるかをいち早く認識し、情に流されることなく堂々と貫き通した。理科系人間のあるべき姿だと思った。

 我々の学生2名は早くから会場に着いていたようで、トラブルはなかった。しかしうち1人が後になって言うには、当日朝まで会場を1時間ほど離れたもう一つのキャンパスだと勘違いしていたと。あぶねぇー。