トレビアーン

 カーステレオから流れて来た女性ボーカルは、ささやき声のように「sh」音を強調し、ちょっと甘ったるいあいまい母音で歌っていた。こういうフランス語っぽい歌い方、UAとかCHARAに似ているな。でも曲調はメルヘンチックで明らかにこの二人とは違う。
 うーん、誰だろう。声から人を当てるのは本当に苦手だ。

 答え:原田知世
 ええーっ!

 『時をかける少女』のぎこちない歌唱を知る者には、本物のミュージシャン(失礼か?)のようにあえてクセのある歌い方で歌う彼女にはビックリだ。でも『彼と彼女のソネット』でフランスの曲に触れて以来、フランス的な音楽を女優と兼業で一生懸命追い求めているんだねえ、と密かにエールを送りたくなった。

 そういえば、学生の時に在籍していた映画研究部には、彼女の色紙が飾ってあったのだ。あと大林宣彦監督のも。だから何、と言われると困りますが。