泣けた作品

 基本的に悲しい物語は苦手だった。少年の頃は物語を読んで悲しくなってくると「こんなことはあってはいけない」とか思って途中で読むのをやめてしまっていたんだな。『アンクル・トムの小屋』『ユンボギの日記』『アンネの日記』などは最後まで読めなかった本。
 『よだかの星』は短編なので「ああ、ダメだ」と思う前にうっかり読み終えて泣いてしまったような気がする。
 今は人間がひねくれているので、悲しい物語を読んでも涙するようなことは少なくなりましたな。

 一番心に迫って来るのは昔も今も「映像のついている音楽」だったりする。
 小さい頃「バラの花とジョー」っていう歌を聞いた時はワーワー泣いた。やなせたかし氏の絵がついた悲しい歌。
 今も思い出すだけで泣けるのは、NHKの「映像の世紀」のオープニングタイトル。加古隆の壮大な曲が流れる中、20世紀に人間がやってきた偉大な業績から、戦争などの酷い所業まで、たくさんのアイテムが“文字で”スクロールしていく。ああ、人間ってなんてすばらしい、そしてなんて愚かしいものだろう、という感情が沸き上がって涙せずにいられない。