土曜8時は笑ってちょうだいね

 最近仕事が忙しくて、しばし現実逃避して『8時だョ!全員集合伝説』(居作昌果)を読み始めたら、面白くて面白くて、一気に読み終えてしまった(しょせんその程度の忙しさだったんだな)。もちろん幼少時によく見ていた番組だが、それがスタートしたいきさつとか、毎週の番組前半のコントをじっくり時間をかけて練り上げる過程とか、スタッフや出演者の「ひとつのものを作り上げる」ことによる絆や葛藤とか、知らなかった話がいっぱい。「プロジェクトX」に取り上げてもいいくらい、いろいろなドラマが舞台裏に展開していたのだ。
 以下、本の内容から印象的な部分を抜粋。

 番組開始当時はコント55号がTV界を席巻していた頃だった。彼らのアドリブ主体の新鮮な笑いに対抗するには、時間をかけて練り上げた笑いをもってくるしかない、と、社内の反対を押してドリフターズを起用した。そういえば欽ちゃんとドリフって一緒に出てるのを見たことがないな。浅草系芸人とミュージシャン出身者の笑いは流派が違うということもあるのかもしれない。このへん歴史的に掘り下げると面白そう。

 公開放送には珍しく、会場では放送の30分も前から前説が始まり、20分前には長さんが登場して出演者を紹介したり客席を盛り上げていた。終了後も客席への出演者の挨拶が続き、観客は合計1時間半のショーを観て充実した気分で帰っていくことになる。つねに客席の客を楽しませることに第一目標が置かれていたという。職人的こだわりが生きていた時代。

 番組が始まって人気が高まってきた1971年、渡辺プロの意向で、半年間だけドリフの「全員集合」を休んで、かわりに同じスタイルでクレージーキャッツの「8時だョ!出発進行」という番組を放送したとのこと。へえー。全然覚えてないな。今残っていればレア映像であろう。

 さて今年の7月だったか、TBS系列の土曜8時に新番組で『CDTVゴールド』という音楽番組が登場したのであった。深夜の『CDTV』とどう違うのかと思って初回を見てみたら、ほとんど同じだったので呆れた。やはり数回で終わったようだ。
 そのときは連想しなかったけど、考えてみればこの時間帯はかつて『全員集合』でTBSが王座に君臨していた時間ではないか。フジではこの時間帯は『欽ドン』『ひょうきん族』『めちゃイケ』と長期に渡ってお笑いでいい数字を取っているけど、TBSは一旦王座から転落したあとはすっかりやる気をなくしてしまったように見えるのだった。