気分は軽薄エッセイ

忘れた頃にやってくる【似ている歌シリーズ】

『プロフィール』(倉沢淳美) ♪1967年 4月生まれ いま17才…
『Special Love』(米米CLUB) ♪もう何もいらない 濡れた唇から special love…

 いや似てるんだってば。

 『気分はだぼだぼソース』を読む。 椎名誠1981年の著書。当時エッセイ界に彗星のように現れ、その面白ふざけた文体は“昭和軽薄体”などと騒がれたと記憶している。といっても私は遅ればせながら今回初めて彼の本を読んだのだが、私が当欄に書く時などに好んで使う文体のかなりの部分が、この本に既に登場していることに驚いた。「電卓カシャカシャ人生」「勝手になんでもおやんなさい的自由競争の時代」なんていうフレーズと、たとえば02.2.28の当欄の私の文章を比べると若干の共通点が見い出せる。もちろん椎名誠のほうがはるかにエンターテイメントに徹しているけど。私の文章の嗜好というものは、この人が1980年前後に開発して世に広めたものから間接的に影響を受けている部分が大きいようだ、と認識した。
 その後20年経って、世の中にはもっと新しく、もっとふざけた文体が登場しているが、私が心地よいと感じるのはちょうど1980年前後の椎名誠くらいのおフザケ度の文章なのだな。

 ただのおふざけ文章ではない。おふざけ文体のまま怒りも見せる。
 とくに本書の3分の1を費やして論じられている、形骸化した結婚式のやり方に対する批判(お色直しやケーキカットに何の意味があるんじゃ!とか)にはうなずかされた。誰も彼もが深く意味を考えずマニュアル的に右へならえ式に他人の真似をするという現象が、彼には我慢ならないのだ。この反骨精神があればこそ、世間の目に臆することなく昭和軽薄体というものを確立することができたんだろう。
 自分も基本的に人真似が嫌いなので、そんな彼の性格に共鳴するものを感じる。だがもし本人に会ったら「オレの文体を真似してるくせに!」と怒られるかもしれない。

 シーナさん当時37歳。今の自分と近い年齢だったんだね。今は58歳か。
 ということは、自分もいつか58歳になるのか? このオレが? ハ、ハハハ…(虚ろな笑)

 いや、彼のように自由奔放な58歳になれたら言うことはないな。