栗田ルパン

 久々にルパン三世の新作アニメを見た。今回は主要登場人物の出会ったきっかけが描かれるということなので見ておこうかなと思って。話自体はそれほど意外性はなかったけれど、思えばルパンの声を栗田貫一が担当するようになってから私は初めて見たわけだ。
 元祖ルパン声優の山田康雄が急逝し、ピンチヒッターを務めたのがものまね芸人の栗田貫一。それを聞いて、アニメの声ってものまね芸程度のものなのか、じゃあクリカン一人いれば他の声優はいらないじゃん、声優っていったい何?などと思っていたのが正直なところ。
 だが見てみたら、さすがに完全に山田康雄と同じというわけにはいかず、苦労しているのが伝わってくる。30秒程度の寄席芸と違って、2時間ずっとものまねし続けるのは大変だ。新作なので当然ながら台詞は新しく書かれたものなので、声の手本はない。山田康雄だったらこう言うだろうと想像して演じねばならない。
 つまり、山田康雄はルパンの声をやっていればよかったのだが、栗田貫一はルパンの声をやっている山田康雄の声をやらねばならない。単に声色だけでなく、どんなふうに抑揚をつけるか、どこはふざけてどこは真面目に、といった発想まで真似するわけだ。誰にでもできることではない。そう考えると一人のものまね芸人に4役も5役もやらせるのはやはり無茶な試みだな、と思う。

 作品ごとに変化が顕著なのはむしろ絵の方で、アニメーターが変わるとルパンの顔が変わったりするのが目につく。でも、見る側としては声が変わるとすごく気になるけど、絵柄が変わってもそれほど気にならないものらしい。キャラクターのイメージを決定付けているのは絵よりもむしろ声の効果が大きいのだな。