ふぐの子の糠漬け

 今日も暑かった。今日の時点で北陸と東北以外は梅雨明け宣言が出ているけど、北陸ももう明けたと見てもいいかもしれない。よせばいいのに昼間の炎天下を町まで自転車こいで行ったり、夕方はプールで泳いだりして、なんだか小学生の夏休みのような一日だった。昨日はほとんど何もしなかったから、その反動で動きたくなったのかな。
 夕食はよく行くラーメン屋で冷し中華。最近よくTVで紹介される、新しい工夫を加えた冷し中華ではなく、昔ながらの冷し中華がむしろ嬉しい。ちなみに、昨年の夏に冷しラーメンと銘打って冷し中華を出していた近所のラーメン屋は、その後つぶれたようである。自業自得と言えよう。

 ところで最近よく見ている番組に『人間講座』(NHK教育)がある。月・火・水と日替わりで3つのテーマが進行し、2ヶ月で新しいテーマに替わる。現在月曜日で進行中の『大好きな韓国』を見始めたのだが、あるとき偶然水曜日の『発酵は力なり』も目にしたところ、講師の先生のエンターテイナーぶりに目が釘付けになってしまい、それからは水曜日も欠かさず見ているこのごろ。
 『発酵…』の講師小泉武夫氏は東京農業大学の教授であらせられ、番組も同大学の講義室で講義するというかたちで収録されている。だがこの講義が型破りで、教卓で鰹節を削るわ、堅い鰹節をクンクン嗅いで「ああいい香りだ」と唸るわ、さまざまな発酵食品を矢次ぎ早に取り出して見せては口に含んで「んー、日本酒があったらたまらないですね」と感動するわ。後ろに黒板がなければ『食いしん坊!万才』だ。話し方もエネルギッシュでユーモラスで、聞く人を引き付けてやまない。蛇足ながら容貌もハナ肇谷啓を足して2で割ったよう(すみません)。非常にテレビ的な大学教授である。大学でも名物先生なんだろうな。

 実は彼の名は少し前から知っていた。石川県には「ふぐの子の糠漬け」というものがあって、これは猛毒であるふぐの卵巣を数年間糠に漬けて毒を消したというおそろしい食べ物なのだが、これを以前から著書等で紹介していたのが小泉氏。もちろん今回の『人間講座』でも小泉氏は教壇の上でバクバク食べて見せていた。たまたま私も最近初めて食べたのでタイムリーだった。こういう全国番組で取り上げられると、近所の名産物が他所の人にとってどのくらい価値のあるものか、感触がつかめてありがたい。こんど実家への土産にでも買って帰ろうかな、と思う。