木と水とフィルムとビデオ

 ああ、やっとサーバーが復旧したか。職場全域停電の影響で2日ほどつながりにくい状況でした。私のせいではありませんが、どうもすいません。そろそろウチのサイトも民間のサーバーに引っ越すことを考えよう。

 『ほんまもん』もいよいよ最終週。私はこのドラマは結構好きだった。美味しいものを食べさせることであらゆる難題を解決してしまうというパターンはマンガなどでは古典的な筋立てだが、その背景にあるのがヒロインやその家族たちの、自然と共存するという姿勢。これは「木」と「水」の物語であった。ヒロインの名(木葉)、娘の名(雪枝)、店の内装の床柱といったあからさまなシンボルから、木葉が高校時代に吹いていたファゴット木管楽器)まで、全編が木と水に彩られていた。
 一時期、多摩川の近くに住んだことがある。空気のキレイさは熊野には到底かなわないけど、大きな川があるというだけで嬉しく、よく川べりを自転車で走った。今は田んぼの中に住んでいるので4〜5月はまわりじゅう水田。水のあるところは心が和む。

 熊野の木葉の店は、外観だけ実在の公民館を使い、内部は渡り廊下も含めてすべてスタジオセットで撮影したそうだ。店の大きな窓から見える山や木や夕日の風景がきわめてリアルで、作り物だとはわからなかった。最近のセットや照明技術は優れ物だなぁと感じた。「木」「大自然」にこだわったスタッフの心意気がこんなところにも見える。
 昔のドラマの場合、ロケのシーンとスタジオセットのシーンは明確に判別できた。セットが安っぽかったという要因もあるが、何よりも、ロケ撮影にはフィルム、スタジオ撮影にはVTRと使い分けていたからだ(オールフィルムのドラマは除く)。室内のシーンではVTRなので人の肌などもテカテカ光沢を放っているのに、一歩おもてに出ると突然フィルムに変わってザラついた感じの画面になるのが普通だった。昔はVTRカメラが重くて外に持ち出せなかったためらしい。ロケにもVTRを使い始めたのは、朝の連ドラでは『鳩子の海』(74年)からだったかな。
 だが見る側からすると、フィルムの粒子の粗さは現実のアウトドアの光線感覚と妙にマッチしていて、けがの功名というか、「中ではビデオ、外ではフィルム」もむしろ効果的な選択肢なのではないかとも思う。いまのドラマはたいていオールVTRだから、ときどき懐古番組で当時のドラマを見ると懐かしくなったりする。