いいか?金沢

 いまメディア上で最もホットな地域は、国外では韓国、国内では金沢といってよいであろう。数年前に石川県の政財界人らが「大河ドラマの舞台を石川に」という運動を始めて、NHKに陳情したりもしたらしいけど、それがアッというまに実現してしまったので驚いた。おそらく森前首相が陰で動いたんだろうな。まあ何にせよ自分の住んでいる町が脚光を浴びるのはまんざらでもない気分。
 先日も奥田瑛二リサ・ステッグマイヤーが金沢近辺のうまいものを食べて歩くという、石川ローカル局が制作して全国ネットで放映された特番があったので、見てみた。

 うーん、やっぱり金沢を紹介するとどうしても、豪華絢爛、すばらしい伝統文化をさあ見なさい的な金沢ホメホメ番組になってしまうね。もちろん安っぽいグルメ番組とは一線を画した、文化や歴史にも踏み込んで深みのある番組だったけど、それだけに金沢の鼻高々な性質がにじみ出ていたことも否めない。
 これはこの番組だけではなく、金沢という町を歩いているとしばしば感じることである。たとえば、金沢市の観光用キャッチフレーズはこんなの。

   いいね金沢

 何がいいというのだろう。ヒネリなさい(←「な」にアクセント)とツッコミたくなる工夫のなさ。金沢の人にとっては金沢が良いということは当たり前であって、もういちいち説明するのもうんざりだから、とにかく来いよ、という感じだろうか。これと非常に似たセンスの文でよく見かけるのは、某有名和菓子メーカーの宣伝文句。

   金沢のお菓子は いいですね

 だから、どこがイイのか説明せえちゅうんじゃ!
 『利家とまつ』にも、私は今一つ乗りきれずにいる。視聴率は関東地区で20%台半ばで、なかなか善戦していると思う。ここで悪口を書いても視聴率が下がることはないと思うので書くけど、見ていてドラマ世界に入り込めない。画面で喋っているのは唐沢であって利家ではなく、松嶋であってまつではなく、反町であって信長ではない。そもそも大河の面白さは、映画、舞台、歌舞伎、狂言など、いろんなジャンルの役者が顔を合わせて、真剣勝負で新鮮な演技を生むところにあったと思うわけで。今回のような若いもん向け人気ドラマ一本槍の人選では、大河ならではの魅力を半減させているし、そのため脚本家も執筆にかなりの制約を受けていると聞く(誰々の見せ場をもっと作ってください、などとスタッフが要請してくるらしい)。そんなこんなで、開始2ヶ月にして見るのをやめた。はっはっは。でも利家が金沢城に入城したらまた見る予定。
 まあもともと観光資源には恵まれているから、もしドラマがコケても金沢に観光客が来なくなることはないでしょう。ええ、実際町並みは綺麗だし、兼六園も意表を突いた面白さがあるし、来て損はないですよ(フォロー)。

 というわけで、金沢に見切りをつけて(嘘)もう一つのアツいスポットの韓国に1週間ほど旅に出てくる。じゃあまた。