プロジェクトX

 今週の『プロジェクトX』はカップラーメン誕生物語であった。この話は結構有名で、新聞雑誌などで何度も紹介されていたから、それらとNHKの扱い方の違いがわかって面白かった。

 以前読んだ記事によると、日清食品の社長(当時)の安藤百福氏がアメリカにチキンラーメンを売り込みに行ったが、現地にドンブリが無かったので途方に暮れた。すると交渉相手のアメリカ人がカップにラーメンを割り入れてお湯を注いで食べ始めた。それを見た安藤氏は驚き、これだ!とひらめいて帰国後カップヌードルを開発した…ということだったと思う。
 さてプロXではどう描かれていたかというと、「アメリカにはドンブリが無かった」話から突然「カップラーメンを作れと安藤が部下に命じた」ところへ飛んだ。一番の鍵である、「アメリカ人がラーメンをカップに入れた」部分は描かれなかったのだ。
 これを見ると、良し悪しは別として、やはりプロXは「ニッポンのお父さんたちは頑張ってきたんです」というコンセプトの番組なのだなぁと感じる。アメリカ人が重要な役割を演じるようなストーリーにしたくなかったようだ。この番組のファンは多いけど、こういう「美談にならないところをあえて描かない」製作方針が好きでないという人もいる。

 それはわからなくもない。以前『知ってるつもり!?』についても似た感想を持った。一人の人間といえどもいろいろな面を持っているが、その一生をたったの55分間で紹介する以上、「コロンブスは名誉に目がくらんだ極悪人だ」というように、どうしても一つの側面だけを語って単純明快な結論を示さざるを得ない。余談だがこの番組は、新作の映画とか始まったばかりの大河ドラマの主人公の人物をいち早く取り上げて、その映画やドラマとは反対のストーリーを作ってぶつけてくることが多い。なんかホームルームで反対意見ばっかり発言するひねくれ者の生徒に似ていなくもないな。

 まあプロXの場合、起きた出来事のごく一部しか見せてくれないにしろ、その断片を繋いだ物語を見て自分が感動して元気になれればそれでいいのではないかと。
 ちなみに私はあの番組の、言葉をぎりぎりまでそぎ落したナレーション台本と、わきあがる感情を抑えこんだような田口トモロヲ氏のナレーションが好きです。