「マネをしないでください」

 昨日の『ちゅらさん』の文也と恵文の泡盛飲み比べシーン、やっぱり抗議が来ちゃいましたか。私もこのシーンを見ながら、ああ、また誰かが文句をつけて来そうだなあ、最後におばぁのナレーションで「皆さんは真似しては駄目であるよ」とかなんとか言うのかなあと思っていたけど、もしそんなこと言われたらせっかくのいい場面が台なしだし。抗議者に言わせれば、問題はイッキ飲みした後の2人の身体的苦悶が全く描かれていないことなのであろう。ドラマでは文也は翌日「おばぁのスペシャルドリンク」を飲んで二日酔いを治したことになっている。つまり、一般の人はおばぁのスペシャルドリンクを飲みたくても飲めないのだから、真似しては駄目だというメッセージともとれる。とれないか。
 たしかにイッキ飲みで病院に運びこまれたり、不幸にして命を落した人は大勢いるわけで、イッキ飲みの危険性は誰もが知っておくべきだと思う。そしてそれはもう世間に浸透しているとドラマ制作者側は考えている。だからこそ飲み比べは命を賭した勝負となり、文也の想いの強さが浮き彫りになるのだ。過剰なまでに「危険ですので真似しないで下さい」のテロップを表示したがる日本のTV界にあって、今回のドラマに注意書きを一切入れなかったことは視聴者を信頼した態度であり、むしろ立派だと思う。いったいいつまで「電子レンジに濡れた猫を入れてはいけません」的なバカバカしい警告を発し続けなければならないのか?

 漫画の『夏子の酒』(尾瀬あきら)のラスト近くで夏子と草壁が日本酒の飲み比べをするシーンがあった。2人とも酒豪なので強烈な飲みっぷりだったが、いいシーンだったし、その描写にクレームがついたという話は聞かない。『ボーダー』(狩撫麻礼たなか亜希夫)にも主人公たち男3人がウィスキー1ケースを3日3晩飲みまくってゲロ吐きまくるすごいシーンがある。その後3人が銭湯に行って風呂につかるだけで完全に酔いから復活するあたりは、件の抗議者が見たら問題にしていたかもしれない。
 やはり、朝ドラと漫画とでは見る人の数が違いすぎるのか? だがどんなジャンルであれ、時が経つにつれ表現に対する規制が厳しくなっていくのを感じる。

 それはさておき、私もおばぁのスペシャルドリンクが欲しいなぁ。