たずね歌掲示板で懐かしい歌についての書き込みを見ると、しばらくその歌が頭の中を流れ続けることがしょっちゅうある。日頃何度も思い出している歌ではそのようなことはなく、記憶の片隅から数十年ぶりにホコリをかぶって出てきたような歌ほどそうなりやすい。
 つい先日は「花の街」という歌に関する質問が来た。ママさんコーラス界ではあまりにもポピュラーな歌ではあるが、私にとっては中学の音楽の授業で習って以来だ。懐かしさのあまり、こちらも頭の中が花の街になってしまい、仕事しながら「♪七色の谷を越えて〜」などと実際に声に出して歌ったりしていた。周りの人には変に思われたことだろう。奇しくも作曲者の團伊久磨氏が亡くなる数日前のことであった。

 そして昨日あたりから私は、ふとしたはずみで「♪一番目のかえるは〜」と口ずさんでいる。「五匹のかえる」という、昔みんなのうたで流れていた歌である。といっても聴いた記憶はなく、中学の頃に楽譜集で見ただけであった。これも20年以上頭の中でホコリをかぶっていた歌だが、掲示板でメロディの一部を目にしたらたちまち芋づる式に歌全体のメロディが甦って感動した。こういうとき歌詞は必ずしも甦らない。自分には詞よりもメロディのほうが強く心に作用するんだな、と思う。
 この歌の作詞は草野心平氏だと初めて知った。カエルの詩ばかり書いたことで有名な詩人である。なるほど、いかにも草野さん的な詞だ。久々に彼の詩集を見てみた。音使いが大胆な、前衛的な作品が多い。たとえば「春殖」という詩はこんなの。

 るるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるる

 無断引用すると著作権法に引っかかるかな。えーと、じつはこれは草野さんの詩ではなくて、居眠りしてPCのキーボードを押し続けてしまったんです。違うか。

 カエルといえば私の住居の前は田んぼで、毎年4月中頃に水を張ると、その日の夜から るるり りりりとカエルの大合唱が始まるのだ。いったい彼らはどこからやってくるのだろうか。毎年不思議だけれどもいまだに真相は謎。