ビデオ人間の会話

「はー」
「どうしたんだ」
「いや、『北条時宗』の見てない回が10回分くらいビデオでたまっててさ。これからそれを全部見るのかと思うと気が重くて」
「実はあんまり見たくないんだろう。和泉元弥、嫌いなのか?」
「まだ和泉元弥も出て来てないんだ」
「やめちゃえ。でもたしかに大河とか1時間ドラマは1回見逃すと全然分からないよな。朝の連ドラだと、1回見逃しても次の回の冒頭に軽い説明があってだいたい話が分かるようになってるけど」
「ということは、朝の連ドラは1回おきに見ても話が通じるわけだ。時間を半分に節約できるぞ」
「それもどうかと思う」
「ビデオを早送りしたらもっと時間を節約できるな」
「内容わかんないよ。昔、洋画のビデオを早送りして見ようとしたことがあったけど。台詞は字幕だから音がなくても話がわかると思って」
「なるほど。で、どうだった?」
「どれが誰の台詞かわからなくて、結局話もわからなかった」
「そうか」
「やっぱりストーリーものは1時間なら1時間かけて見なければ邪道だよ。バラエティはよく早送りで見るけど」
「そうそう、仮装大賞なんかは早送りして面白そうなのだけ見る」
「でもうまく止めないと行き過ぎて、オチを見ちゃうんだよな」
「1時間の番組を何分で見たかを測れば、どれだけ熱心に見たかのバロメーターになるな」
「面白いと思ったら繰り返し見るから、見た時間が元の時間より長くなる。なかなかそんな番組はないけど」
「しかしたまったビデオをどうにかしないと」
「ウェラブルのビデオ再生装置があればいいな。再生機は腰に下げて、ディスプレイはサングラスみたいに目の前にあるの。道を歩きながらでも録画が見られる」
「うーん、現実と仮想の区別がつかなくなりそうだよ、それ」