石器発掘捏造事件に関する三大新聞の報道

 新聞は特定の立場に偏らず中立であるべきだ、という意見も聞かれますが、実際のところは世間に物を言いたい人々が作っているのが新聞。だからどんな新聞にも性格があって当たり前です。では各紙の性格を人に例えたらどんな感じだろう? と考えて、それからは大きな事件があった時には三大新聞の記事を読み比べるようになりました。別に特定の新聞を批判・称賛しようというものではなく、あくまで各新聞の読後感想として書き留めておきます。



 今回の石器発掘捏造事件は毎日新聞のスクープだった。藤村氏が密かに石器を埋めて回るところを新聞側がビデオで隠し撮りし(というと聞こえが悪いが)、あとで本人に問い正して明らかにしたもの。11月5日の毎日の紙面はビデオで捉えた彼の問題の行動を1ページまるまる使って詳細に再現するなど、もう鬼の首をとったような騒ぎようだ。読む側としては、毎日がどうやって彼の不正を前もってキャッチしたのかにも興味がわく。記者の勘が嗅ぎつけたか、もしくはタレコミがあったか。もちろん記事は情報源には触れていないし、それでいいんだけど。いずれにせよ記者(カメラマン)は何日間か毎晩毎朝現場を張り込んでいたのだろう。スクープとは泥臭いものだと改めて思う。

 毎日のスクープを受けて、翌日11月6日に他紙にもこの事件の記事が載る。「前から怪しいと思っていた」という識者の声を多数載せているのは読売。学界の信頼を失墜させた彼の不正行為をどこよりも憤っている。これは他社にスッパ抜かれた悔しさ無念さの裏返しか(たとえば、読売には毎日新聞の調べでわかったとは書かれていない)。今回の捏造が発覚したことで、日本人の起源が70万年前と言われていたのが20万年前までさかのぼらざるを得なくなった、という説明はわかりやすかった。なるほど、それで皆大騒ぎしているのだね。(考古学オンチのオレ)

 朝日はやはりクールであった。毎日新聞のスクープだということを明示しているし、藤村氏を批判するより、彼がなぜその行為に至ったかを冷静に分析している。事故報道などでの朝日の記事の傍観者的な冷淡さには時々嫌な気分になるが、人の犯した犯罪の報道にはこういう客観的視点もある程度は必要だな。

 ”大発見”が報道された(はずの)10月27日前後の各紙も比べてみると面白いかも。この時に大大的に報道した新聞ほど捏造発覚に怒っているのでは?



【現時点での私の中での3大紙の性格】(今後変わる可能性あり)
読売:庶民向け。血が通った記事。わかりやすい。エモーショナル。物事を深く堀下げようとしない(表面的)。
朝日:知識人向け。論理的。物事の裏を執拗に読みとろうとする。ひねくれもん。クール。高みの見物。
毎日:アーティスト(別名:変わり者)向け。センスで勝負。ビジュアル重視。飛び道具を使う。
(00. 11. 10)