日常 (6/6 - 6/30)

6/6 (火)
 2週間ぶりに出勤。論文Bの改稿。XRD 測定のため KKS に赴くも、装置が停止していた。
 1週間後にプロジェクトEの小ミーティングを行うと聞かされてギャーとなる。突貫工事で実験データを得なければならなくなった。
 論文Cのための追加実験について共同研究先と相談。

6/7 (水)
 論文Bの再投稿。1ヶ月前にリジェクトされた雑誌に異議申し立てをする形でもう一度トライしてみる。コメントを基に少しは改稿もした。明日の製膜の準備と、コインセル作成に必要な物品の確認。

6/8 (木)
 レーザーにガスを入れて3週間ぶりに製膜。KKS に行ってプチ製膜。職場に戻って熱処理開始。夜に2回目の製膜。

6/9 (金)
 製膜。午後、KKS に行ってプチ製膜。職場に戻り夕方からコインセル作成。じつは誰の助けも借りずに作るのは初めて。大から小までいろいろな失敗をした。おかげで今後は普通に作れる自信がついた。
 査読依頼が来たが、到底時間が無い。残念ながら断る。

6/10 (土)
 休日出勤で、昨日作ったコインセルの電気化学測定を始める。これも一人でやるのは初めてだが、以前同僚の説明を記録した動画を頼りに無事乗り切った。4個作った中で、最低1個はまともな特性を示しているようで、非常に安堵した。

6/11 (日)
 休日出勤。時々測定を見ながら論文Cの修正。深夜に共著者に送信して業者の英文校正を依頼する。査読者からの要請である。近年、英語にダメ出しをされたことはほとんど無かったが、これも勉強。
 ビームマンガ実況の日だったが忙しくてリアルで見られない。あとで追いかけ視聴しよう。

6/12 (月)
 午前、KKS にてプロジェクトFの小ミーティング。職場に移動して明日のスライドを作成。

6/13 (火)
 午前、KKS にてプロジェクトEの小ミーティング。突貫工事の甲斐あって、最低1個は意味のあるデータが得られ、それを基に共同研究者との今後の方針を話し合うことができた。ひとまず気が楽になった。午後は書類書き。

6/14 (水) 快晴、〜30℃
 午前、同僚Bの博士論文公聴会を聴く。彼は中国人だが仏語で発表・質疑応答を問題無くこなした。見直した。
 書類発送。共同研究先から事務書類の英文についてコメントを求められ、対応。

6/15 (木) 快晴、〜29℃
 共同研究先から新しいデータが送られて来たので、コメントを返す。
 戻って来た論文Cの校正原稿を検討。勉強になることが多かった。英文自体はもちろんのこと、「ハイフンとマイナスを使い分けるべき」「数字と単位の間のスペースは普通の半角スペースでなく特殊なスペースを使う」など、普段自分がやっている修正以上に細かい修正が施されていて、敬服した(文章のあとのダブルスペースをすべてシングルスペースに直されたのには少々驚いたけど)。今後もたまには利用して学ばせてもらおう。
 7日に異議申し立てをして再投稿した論文Bについて、編集部から申し立てを却下する旨返答された。納得が行かないが、この雑誌に関してはこれが最終通告と考えて別雑誌へ方向転換するしかない。

6/16 (金) 快晴、〜27℃
 論文Cの改稿原稿を共著者に送信。

6/17 (土) 快晴、13〜28℃
 部屋の掃除、買物。仕事のことは1日忘れる。

6/18 (日) 快晴、〜33℃
 午前中、論文C直し。午後、市民が水浴びしているウィルソン橋のたもとへしばし赴き、自分も少し足を水につける。せっかくの暑い日曜なので。

6/19 (月) 快晴、17〜36℃
 大学本部に寄って書類を受領して出勤。論文C再投稿。午後、論文D用のデータの検討。資料を家に忘れたので一旦取りに戻るなど。とにかく暑くて頭が回らない。PC もずっとファンが音をたてている。暑さのせいだ(と思う)。

6/20 (火) 快晴→晴、18〜36℃
 論文Dについて主著者にメール。論文Bを別雑誌に投稿。「ダブルブラインド」方式、つまり査読者には著者が誰だかわからないようにする方式の雑誌。そのため文中で過去の自分達の業績に触れた部分も、主語を「我々」とすることはできない。公平かもしれないが自由は制限される。

 今日も暑い。明日も暑いらしい。夜の France2 の天気予報で表示される各地の予想最高気温は、昨日も今日もめずらしくわがトゥールが国内で最高。避暑のため、午前は大学図書館でデスクワークしてみる。少し涼しいがエアコンはない。夕方、ついにエアコンのある PLD 部屋に籠って仕事。ついでに帰宅途中にトラムをわざと乗り過ごして長時間車内に留まって論文読み。夏恒例、寝床をリビングに移す。

6/21 (水) 快晴、21〜38℃!
 出勤途中にトラムをわざと乗り過ごして論文読み。午前、昨日のように図書館でデスクワーク。論文Dについて主著者とメールやりとり。午後、スプレー製膜系のノズルの調整など。暑くてあまり捗らなかった。早めに退勤。ちなみに昨日と今日はTシャツ・半ズボン・サンダルで出勤した。
 夏至で、Fête de la musique があった。家にいても暑くて何もできないので、今年はしばし見物に行った。

6/22 (木) 晴、17〜37℃
 昨日の朝は目覚めたら枕もシーツも汗でびっしょりだったが、今朝は比較的楽だったので、普通の格好(=長ズボンと靴)で出勤。しかしやはり消耗した。明日から気温は下がる見込み。
 スプレー製膜系のリフォーム、ついで2ヶ月ぶりに製膜2回。熱処理をしかけて退勤。夕食を作りたくなかったので rue Colbert のケバブ屋で夕食。

 仏国内の大学から博士論文公聴会の審査員を依頼される(人生初)。初めて論文の査読を依頼された時のように嬉しい。僕は英語しか喋れないし、立場も偉くないけどいいんですか?と先方に確かめたら、いいというので喜んで引き受けた。審査員といっても評価書などを書く必要はなく、ただ発表を聞いてコメントや質問をすれば良い。どちらかというと立会人に近いな。とはいえ厳かな儀式なので最低限品格のありそうな振舞いだけは心がけよう。
 査読依頼が来る。引き受ける。

6/23 (金) 曇/晴、19〜28℃
 過ごしやすい気候が戻って来た。論文Dについて同僚Aと討論。そろそろ応物の講演申込締切が近い。題材は迷った末にこの論文Dのテーマに決め、今日は1日予稿第1案を作成していた。明日の停電に備えて装置を停止。夕食はパスタ屋で。

6/24 (土) 晴、〜28℃
 午後、職場へ赴いて停止していた装置を再立ち上げ、ついでにポンプのフィルタ交換など。Atlantes で買物して帰宅。

6/25 (日) 曇→快晴、17〜28℃
 外出せず。洗濯と掃除。日本の共著者に予稿原稿送付し、了承を得る。仏の共著者用に本文を英訳(これから)。髪を切る。
 週末は主に『難破船』(中森明菜)や『モニカ」(吉川晃司)の歌唱映像を視聴していた。今見ると吉川のデビュー当時の顔つきや振舞いはいかにも初々しい坊やという感じで、こんなに幼かったかなと少し意外。翻って最近の歌唱映像ではすっかり貫禄がついてギラギラしている。19 歳と 49 歳とはいえこれだけ印象が変わるものかと思った。たとえば近藤真彦は昔も今もわんぱく坊主だし、佐藤浩市は昔も今もボスキャラだ。昔を知らない視聴者の「財前部長が歌ってる!」というコメントも面白い。『下町ロケット』を見たくなる。

6/26 (月) 曇、15〜28℃、少し湿度が高い
 仏の共著者に原稿を送った後、データを見直したら自分の解析ミスに気付き、計算のやり直し。試料のカーボンコーティングの試み。やっている最中に案を思いついて別のやり方でも1枚作ってみる。レコーディング中にその場の思いつきでいろんなアレンジを試した山下毅雄氏のような。深夜、講演申込(明朝まで差し替え可能)。

6/27 (火) 曇→雷雨、〜25℃?
 朝、予稿原稿を少し直して差し替え。昨日熱処理開始した試料の取り出し。期待どおりきれいにできていた。でも材料の組み合わせが根本的に間違っているような気もしてきた。旅はまだ終わらない。先週再投稿した論文Cの査読結果が早くも返ってきた。また要改稿。この査読者は厳しいが紳士的だし信頼できる科学者のように見える。苦しいけれども頑張らなければ。製膜する予定だったが PLD のレーザーパワーが寿命に近づいて来たので断念。依頼された査読原稿を読む。不満な点が多く、こっぴどいコメントを返してやりたくなる。自分の原稿は紳士的なコメントを受けて嬉しかったにもかかわらず。

6/28 (水) 晴一時雷雨、17〜23℃
 論文C改稿計画立て。論文Dのための背景の勉強。
 査読を依頼される。ちょうど投稿中の論文Bのテーマに近いものだが、僕はこのテーマで出版した論文はまだなく、あまりエキスパートとはいえない。少し迷ったけれども引き受ける。それにしても編集部はよく僕がこのテーマをやっていると知っていたな…と思ってよく見たら、依頼元の論文誌が僕の論文Bの投稿先だと気付いた。なんのことはない、今自分のところにある原稿から類似のを見つけてその著者に査読させてるだけだな。互助の精神というか相互監視システムというか。(追記:ダブルブラインド方式の雑誌であるにもかかわらず、奇妙なことに僕の査読する原稿には著者名・所属がきっちり記載されている。編集側からのメールではその情報には一切触れられていない。著者がうっかりいつものクセで自分の原稿に書いてしまったのだ。別にいいけど)

6/29 (木) 晴一時雷雨、13〜21℃、寒い
 午前、共同研究先の化学科にあるマイクロラマン分光器の使い方を学生G氏に教わり、以後自由に使う権利を得る。KKS に移動し、同僚Bに試料を SEM 観察してもらう。EDX もやりたかったが装置が故障中でできず。職場に戻ってデータ整理しているうちに今日も終わる。バスの中で居眠りして隣の人に頭がぶつかりそうになるくらい疲れていた。

6/30 (金) 晴一時雨強し、17〜23℃
 遅めに出勤。論文Cについて共著者とやりとり。コインセル作成準備。懸案であった光学顕微鏡の校正のし直し。夕食はパスタ屋で。
 プロジェクトMの主宰者と立ち話。来週火曜に全体ミーティングをやるとずいぶん前に決まっていたのがその後音沙汰がなく、このまま忘れてくれたら有難かったのだけど、他の人がリマインドしたらしく結局予定通りやるとのこと。またもや慌てて実験データを得ねばならなくなった。

   ◇ ◇ ◇

 そんなわけで1年の半分が過ぎた。1月以降何をやってきたか振り返るに、VOx 関連では実験と解析で共著者らと侃々諤々の議論を続け、3個のプロジェクトではミーティング直前にやっつけ仕事でデータを拵え、論文投稿では雑誌側とやり合うも思うように受理に至らず悶々とし、4月以降急に査読依頼が増えて3ヶ月で6件(進行中含む)こなし、プライベートでも重要案件に向けて準備をせねばならず気が抜けない、といった日々。
 研究テーマをちょっと広げ過ぎて自身疲れ気味な気はする。研究者のエネルギー源は世間から仕事を認めてもらうことであり、その意味で秋に博論の審査員に呼ばれたのはささやかだが嬉しい出来事だ。反面、論文がなかなか受理されない状況はしんどい(最終的にはどこかから出版されるだろうけど)。査読を頼まれるのは光栄だが、これも多すぎるとしんどい。論文誌は年々増え、全世界の発表論文数も単調増加し、それだけ研究者がやらねばならない査読も増え続ける。貨幣と同じで、論文は沢山出回れば良いというものではない。またそろそろ論文発表のあるべき姿を考えてみるべき時かもしれない。