天皇陛下の「お気持ち」ビデオメッセージ

 僕は世間の人が発する感想を見て「ああそういうことか」と納得するくらいしかできないが、しばし天皇制について考える良い機会にはなった。
 天皇を元首に据えるという改憲草案が自民党から出されている中、天皇自身が「それは嫌だ」と思っても、憲法で政治発言が禁じられている。自分の処遇に対してすら自由に意見が言えない窮屈な立場だ。その状況で、問題のない範囲の表現ながら、こうして(テレ東も含め)全 TV 局でノーカットでお言葉が放送されたこと自体が画期的だと思った。当たりは柔らかいが選び抜かれた言葉で、強い思いを述べられる姿に見入った。久々に天皇陛下の存在感を感じた。

 直後の安倍氏は別の意味で印象深かった。引きつった表情、ごく短いコメントを語り終えて一礼もせず足早に歩き去るマナー、「御発言された」と間違った敬語の用法。天皇陛下との素養の差があまりに大きい。天皇を元首に据えようと機会を伺っている自民党日本会議が、その天皇の御心をいかに軽んじているかが、多少は民に伝わったのではなかろうか。