原発推進、即停止、縮小 (1)

 5月に知人から、日本の全ての原発をただちに停止する市民運動の署名に参加して下さいというメールが届いた。もしただちに停止したらどういうことが起こるのか判断するだけの十分な材料が自分には無く、署名は保留すると答えたのだけど、その後も彼は2回にわたり原発がいかに有害かという長いレポートを送ってきて、署名しないのは無責任とまで言い放った。なんか弁明するのも面倒。市民運動によく見られる、敵の言い分に全く聞く耳を持たないラディカルさが自分へのメールの文面にも感じられる。まあ市民運動というものは国という巨大な敵を相手に闘わなければならないので、えてしてラディカルにならざるを得ないのは解る。とはいえ原発の弊害について自分に問題提起してくれたのは確かで、これをきっかけに今後の原発の進むべき道について少し真面目に考えるようになった。

 市民運動に限らず、マスコミも一般国民も多くが「今すぐ全原発を停止する」か「今後も新たに原発を建設する」かという二元論に陥っているようだ。ここでは便宜上前者を「即停止派」、後者を「推進派」と呼ぶことにする。マスコミも、朝日は脱原発の方向、読売は原発推進の方向に向いているという具合に、社によって主張が非常に異なる場合がある。ドイツの脱原発の政府決定やイタリアの国民投票の結果を論ずる上記2紙の社説を読み比べたら、論調が全く対照的で目を見張った。
 さて国民はどう考えているのか?

朝日新聞国際世論調査(5月)

 東京電力福島第一原発の事故を受け、朝日新聞社は今月、日米仏ロ韓独中の7カ国で世論調査を実施、事故への見方や原発に関する意識を探った。(アサヒコム、2011. 5. 26)

 福島以後、日本で原発反対派が増えたのは明らかだが、ドイツやロシアに比べて当の日本で賛成派と反対派が拮抗しているのが目につく。また賛成反対を合わせて 76 % にしかならないことにも気付く。4分の1の日本人は判断がつきかねているということだ。これほど無回答が多い国は他に無い。無関心の現れとも解釈できるが、やはりこの複雑で難しい問題に多くの人が悩んでいるのだと自分は思う。「今すぐ全原発を停止せよ!」と叫ぶ運動家は、政治家に署名リストを送るよりも、この賛成派と無回答の合計6割の国民の意識をどうやって変えていくかを考えなければならないと思うのだが。

朝日新聞世論調査(6 月 11、12 日)

 朝日新聞社が11、12の両日実施した定例の全国世論調査(電話)によると、「原子力発電を段階的に減らして将来はやめる」ことに74%が賛成と答えた。反対は14%だった。(アサヒコム、2011. 6. 13)

 定期検査で運転停止している原発に関して、「国が求める安全対策が達成されれば」という条件を掲げて、再開の賛否を聞いた。その結果、再開に賛成51%、反対35%だった。(同上)

 記事中では触れていないけれど、半円グラフを見ると、相変わらず原発に賛成と反対の割合が拮抗している。しかしこの調査では「段階的に減らして将来はやめる(ここでは便宜上「縮小派」と呼ぶ)」という項目が設けられている点が前回よりも現実的だ。即停止か推進かの二元論では話が平行線でキリがないのだ。いつかは大多数の人々が納得する合意点を見つけなければならない。結論を言うと、自分もこの「段階的に減らして将来はやめる」がベストだと今は思っている。(つづく)