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女性教諭、生徒ら2百人の名簿盗難…帰宅途中(2011. 6.12 読売)

外国人「これはわかります。

[人]、[物] 盗難

という図式ですから、先の起訴のパターンを参考に考えると「[人](が)[物](を)盗難(した)」という意味になるという約束事ですね。女性教諭が名簿を盗んだのですね!」
日本人「残念ながら、違います。盗んだのではなく盗まれたのです」
外「くッ……どこを見ればそう書いてありますか?」
日「盗難とは盗まれて被害に遭うことです。盗むほうは窃盗と言います」
外「ううう…」
日「文脈からも判断が可能です。普通、生徒の名簿は教諭全員が持っているものです。それに、学校を後にして帰宅している途中の人が学校の備品を盗むなんて、場所的におかしいでしょう」
外「そんなこと言われてもわかりません!」
日「まあ、新聞見出しで能動態と受動態を区別するのは、書く方も読む方も最も難しい問題の1つですね。昔は受動態の時は「盗まる」などと書いたのでしょうが」
外「単純に「[物] 盗難」で良いのでは。わざわざ盗まれた人を最初に持ってくる必要があるのでしょうか?」
日「いい指摘です。主役は盗まれた名簿であるはずなのに、被害に遭った人を先頭に持ってくることで、この人の管理のうかつさが強調され、批判的ニュアンスが醸し出されていますね。やり過ぎと感じる人もいるかも」
外「また「女性」という情報も見出しに置くほど重要とは思えないんですが。もし男性だったら「男性教諭」と書くのですか?」
日「たしかにこの事件で、教諭の性別は最重要情報ではないですね。一方で、盗まれた名簿の学校が小学校か中学校か高校かという情報は入っていません。またどういう状況で紛失したかも書かれていません。ひったくりか車上荒らしか電車の網棚に忘れたか…。むしろ帰宅途中かどうかよりそちらが重要だという気がします」

生徒ら2百人の名簿盗難 中学教諭の車から

日「こうすれば字数も1字減って、情報も増やせます。どうでしょう」
外「『女性教諭』という単語でオッサン読者の目を引く効果は失くなってしまったけどね!」