宇野誠一郎氏

 コドモの頃に親しんだ音楽は一生心の中に残るものだ。自分の場合、幼少の頃に見ていたアニメのテーマソングや BGM が長じてからも折に触れて脳裏で再生され、それらの多くはじつは宇野誠一郎氏の作曲だった。

 『ムーミン』(1970) はテーマ曲が特に有名だけれども、哀愁のある BGM の旋律が番組全体を忘れられないものにしていた。まあ幼稚園児だった初見時に BGM までそらんじたわけではなく 10 年くらい経って再放送で見て脳内に固定化されたのだけど。サントラが発売されないかなあといまだに夢想する。『小さなバイキングビッケ』(1974)、『一休さん』(1975) の BGM にも印象的なものが何曲もある。
 楽しい曲はカーニバルのような高揚感がはじける。しっとりした曲は優しく包みこむ。いずれもコードがとりわけ独創的。『ひょっこりひょうたん島』(1964) のイントロ、5小節すべてをメジャーコードで導入するのは斬新で、さぞ当時の人々を驚かせたと思う。『ネコジャラ市の 11 人』『山ねずみロッキーチャック』『悟空の大冒険』『ふしぎなメルモ』…みんな宇野誠一郎。あ、『ベルトクイズ Q&Q』もそうだったのか(いま Wikipedia で知った)。

 今の子供番組は云々などと言うつもりはないが、この人の 40 年前の仕事がその後の子供番組の劇伴に大きな影響を与えたのは間違いないのではないかな。ともあれ我々の世代の子供時代は、彼によってより情緒豊かなものになった。そのことを感謝したい。ありがとうございました。