味屋

 Rue Colbert にある、私がトゥールに来て初めて見つけた日本料理店『味屋 (ASIYA)』。店名にも装飾にも日本人的な感覚が見受けられたので、きっと本物の日本人が経営しているに違いないと思って入ってみたら、スタッフに日本人は誰もおらず、食材も器もニセの日本料理だったので非常にがっかりしたのが2年前。しかし少なくとも店構えは、他の一見して偽物とわかる日本料理屋とは一線を画している。

 昨日、街でたまたま言葉を交わした初老の仏人男性が教えてくれたところによると、この店は 10 年ほど前にオープンしたときには日本人女性が経営していたが、その後売却され、内装などそのままで別の国の人(ラオス人?)が経営を続けて現在に至るのだという。なるほど、それで『味屋』を「アジヤ」と読ませるのにも、「営業しています。」と日本語で書かれた店頭の木札にも納得が行った。そしてその木札が休日でもそのままになっていることにも。

 ついでに、トゥールでおそらく唯一、本物の日本人が板前をしている、駅の隣の日本料理店『ZEN』についても、たぶん経営者はベトナム人だろうと彼は言っていた。まあそれはさして重要なことではない。味屋と違い、ここで出される料理の質や流儀はちゃんと日本流を踏襲している。それが重要だ。