雪についての顛末

 5日午後、雪がちらほらと降ってきたのが職場の窓から見え、やがてだんだん地面が白く覆われて行った。自分自身トゥールで見る雪は初めてで「おお」と思ったし、他の同僚もその時は結構はしゃいでいた。しかし夕方6時頃に「バスが動いていない」という情報が入った。思ったより雪に対して脆弱な町だった。

 6時半頃退勤し、スーパーに寄る。なるほど車道の車は皆ノロノロ運転している。スノータイヤやチェーンを履いている車は皆無だ。情けないとちょっと思った後、いや仕方の無いことだと考え直した。東京も「ちょっと雪が降っただけで交通がマヒして、情けない」と雪国の人からよく揶揄されるけど、たまにしか来ない大雪に備えてスノータイヤを所有しておくことが果たして現実的かどうかという問題なのよね。さてスーパーに入る前に1台だけ Jean Jaures 方面行きのバスが来た。自分はどうしても食料を買ってから帰りたかったのと、時間が経てば渋滞が緩和されてもっとスムーズにバスが来るかもしれないと期待したので、見送った。

 後から思えばこのバスが奇跡的な最後のチャンスだったのだ。買い物の後、バスの姿を探しながらとりあえず家のほうへ歩くことにするが、雪は降り続き、路面状態は悪化の一途、いくら経ってもバスは来ない。エネルギー補給のためにさっき買ったバナナを食べたりしつつ、とうとう家まで歩いてしまった。5 km の道程に2時間かかった。もしスキーを履いていればもっと速かっただろうな、などと考えた。

 明けて6日朝 8:30 頃、バスが来るかどうかもわからないので、とりあえず家を出て大通りまで出て、職場方面へ歩き始める。バスはまだ通常運行してはいなかったが、行き先欄に「SPECIAL」と表示されたバスが同じ方向にやってきたので、とりあえず乗ってみる。目的地は不明。フランス人乗客は運転手に行き先を訊ねているようだが自分には理解できない。注意して停留所を観察する。途中の Verdun でいつもと少し違う場所に停まったので、ああここから違う方へ行くのだとわかり、すかさず降りる。別のバスに乗り継いで、なんとか職場のある丘のふもとまで来られた。そこから軽く歩いて出勤。遅れて出勤してきた同僚は、バスがなかったという。きっと出勤時間帯にのみ SPECIAL バスが用意されたのだろう。ラッキーだった。



 夜、どうしても今日中に送らねばならない書類を職場から送ったのち、退勤したのが 20:40。バス停に来ると電光掲示板にメッセージが。「今日のバス運行は 19 時で終了しました。夜間バスもありません。明日は 9 時から運行します」。道路状態はもうある程度回復しているので、夜間バスもないという仕打ちには少々不満を感じたが、徒歩で帰るしかないと確定したのでかえって惑わずに歩くことができ、1時間半で帰宅。それにしても今夜は特に冷えた。マフラーを顔の下半分に巻き付けずにいられない。後で聞いたらマイナス 8℃ だったとか。いろいろ悪条件が重なって酷寒の中の徒歩帰宅となったが、これができたのだからもう大抵の悪条件は怖くない。