自転車で 30 分ほど出かけた他は、部屋でだらだらと過ごす。

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菊池寛
 きっかけは、今朝見た、太宰治の写真で有名な銀座のバー『ルパン』の主人の死亡記事。現在のルパンの写真が記事に添えられていた。この店が今も存続しているとは知らなかった。早速店のサイトを訪れる。昭和初期の内装をそのまま残す店内は、映画などのロケにしばしば使われていて、最近の『丘を越えて』もこの店のシーンでクランクインしたとのこと。文藝春秋6月号の記事にも後押しされて、『丘を越えて』に登場する菊池寛や馬海松といった人物を調べ始めたら、面白くてのめり込んでしまった。
 菊池寛には出版界の大物というイメージが強かったのだが、時系列を追ってみると、一人の小説家が、自分の言いたいことを自由に言うために、雑誌『文藝春秋』を少部数で創刊したのが始まりだったのだな。それが予想外に大当たりして、本人はついに実業家のような存在に。アーティストが雑誌を企画し創刊するケースはたまにある(手塚治虫が『COM』や『れお』を作ったようなものか)けれども、ここまで成功した例はないと思う。
 菊池寛の書いた文章、とくに『話の屑籠』を読むと、表裏のない大らかさ、ユーモアとともに、何者にも左右されたくないという自由主義が伝わってくる。やりたいことをやり続け、その多くが世間にも受け入れられた幸福な人。その成功はもちろん、状況を読む確かな視点と感覚があってのことだったのだろう。