坊っちゃんの時代

 報告会準備。基板カット。報告会。夜、久々に電気特性の実験。なんだかよくわからない結果。
 夕食:『こう泉』で天ぷらうどん。揚げたてでうどんにそっと乗せられて出てくる天ぷら、汁に浸かるとジュワーッと音がする。旨い。

■『坊っちゃん夏目漱石新潮文庫:初出 1906 年)
 恥ずかしながら最近初めて読了した。こんなに面白かったのか。第一に語り手である主人公の畳み掛けるような小気味よいタンカ、痛快な言葉の表現が。そして彼の竹を割ったようなサバサバした性格と行動が。あまりに有名な原作だから、子供のころから学年誌にはダイジェスト版が載っていたし、映画やTVアニメで観たりもしたのだが、当時は原作にトライしようという気にならなかった。実際、後半はストーリーをほとんど忘れていた。偉業を成し遂げるわけでも巨悪に打ち勝つわけでもなく、物語として子供の喜ぶ要素に乏しかったからか。
 坊っちゃんの一人称語りを読みながら、筒井康隆の一連のエッセイの文体を連想した。世にはびこる馬鹿な者どもをバッタバッタと斬って行く、しかも読者に爽快感を与える文章。坊っちゃんの文章の躍動的なところも百年を経て全く古びていない。「何がアハハハだ。」という一文で私はこの作品のファンになった。井上ひさしに言わせると、映像化はことごとく失敗しており、それはこの作品が文章の面白さで成り立っているからだと。本当にそのとおりだな。映像というものはその時代のテンポで作られ、そのテンポが数十年経つと古びてしまいやすい、という宿命的弱点があるし、小説の一人称独白は映像にはまず生かされないし。
 余談だが今回本書を手に取ったのは、このキャラクターが母校の校舎の壁面にデカデカと描かれているのを見たのがきっかけだったかもしれない。どちらかというと山嵐っぽい気がするんだけどね。語りたいことはまだまだあるけど今日はこのへんで。