試合に勝って勝負に負ける

 9月の総選挙の日、開票速報を見ていたら、自民党の候補はかなり接戦で競り勝った選挙区が多かったので、もし全国の票数で比べたら2:1よりも差は縮まるだろう、となんとなく思っていた。そんな折にこの記事を読んだ。

 先日あった総選挙での300小選挙区の票数のことである。
 自民、公明両党の候補者の得票数を合計すると、ざっと3350万票だった。一方の民主、共産、社民、複数の新党や無所属を全部合わせると3450万票を超えている。なんと、100万票も与党より多いではないか。
(05.9.26 朝日新聞天声人語」より)

 差が縮まるどころか、形勢が逆転していたとは。選挙のあと、自公連立に投票した有権者に向かって「アンタほんとにそれでいいのか!」と叫ぶような市民の声が多く聞かれたが、実際の民意はそれほどには偏っていなかったことがわかって少し安心した。
 同時に、民意が反映されない今の選挙制度の不完全さに慄然とする。しかし強大な権力ができてしまった今、その制度を変えようとしても容易ではないだろう。強いものは自分に有利なルールを作ることでさらに強くなろうとする。流れを変えようと思ったら力技で投げ飛ばすのではなくて、ちょっとした隙が出た時にうまく足をすくうしかないのだろう。