査読/永島慎二氏

 まる2日かかって査読レポートを書く。こんな仕事に2日もかけるのもどうかと思うが、いろいろ知らないことがあって勉強しながら書いたりするし、このレポートが複数の研究者の業績に影響を与えるわけだからいいかげんなことは書けない。でも結局、小姑のようにねちねちと粗探しをするレポートになったような気がして、完成させて発送した後でも「これでよかったんだろうか」とイジイジ振り返ったりする。考えてみれば私が査読した論文で掲載に至ったのはいまだに1本もないんだよな。私が厳しすぎるのか、もともと投稿数に対する掲載率が低いのか、不出来な論文ばかりが私のところに回されてくるのか。
 だが、今からもう1つ別の書類を書かなければならん。イジイジ振り返っている暇はない。

 永島慎二氏が亡くなったことを書き留めておかねばならない。
 死亡記事からのリンクで知ったのだが、6月下旬まで朝日の東京版に永島氏のことを綴った記事が連載されていた。最終回は「いつかきっと、元気になって、たくさんのファンのために個展が再開する日がくることを‥待ち望んでいる」で終わるが、実はこの記事の連載中に亡くなっていたとは。
 『漫画のおべんとう箱』などを読むと、極めて多彩な絵柄を駆使していることに驚かされる。漫画を心底愛していることがわかる。「一日中机に向かって描き続けていられるくらい漫画が好きなら、誰でも必ず漫画家になれます」という言葉が忘れられない。単純明快。ハンパな気持ちで描いている輩に対する強烈な苦言だと思った。
 叙情的な線で描かれる若者やコドモの話が私は好きだった。商業主義を嫌い、目立たないところで描いていた。書き下ろしという言葉が死語と化していた90年代に、まるごと1冊オールカラー書き下ろしの単行本を発表したりした(『銀河鉄道の夜』)。あれ買っておけばよかったなあ。再版しないかなあ。