『ららら科學の子』

 新年あけましておめでとうございます。
 何かとキナ臭い世の中ですが、人々の心や経済や国際情勢が少しでも安定に向かう年になるよう祈ります。

■『ららら科學の子』矢作俊彦(2003年 文藝春秋
 元旦はほとんど家に籠って過ごした。
 年末から読んでいた表記の本を読了。中国の田舎から30年ぶりに日本に帰還した男性。浦島太郎となった彼の目に現代の東京はどう映ったのか…という話。主人公が今の東京を歩き回り、学生時代を過ごした1968年の風景と比べた驚きや怒りがハードボイルド文体で語られる。
 ここ数日、東京の街を歩いている時も、じつは主人公の心境に思いを馳せていた。程度こそ違えども自分も地方在住者で、ごくたまに東京に来てこの街に接している。主人公の心境が少し自分に乗り移った時に書いたのが昨日の日記である。東京の変貌の勢いに唖然としたり流されたりするよりも、時々浦島太郎のような目で町を見て「これはいったい何なんだ?」と考える人間でありたい。