『光る風』

■『光る風』山上たつひこ(1970)
 図書館で借りて一気に読了。あの『がきデカ』の作者が昔はこんなシリアスものを描いていたと知ったときはびっくりした。私の世代にとってはそういう位置付けなのである。長いこと気になっていたがようやく手にした。

 政治や権力に反発する嵐が日本中に吹き荒れていた'70年という時代の空気が濃縮されたような作品。伝染病による奇形、細菌兵器、軍国主義の復活。いまや皆が忘れたいと思っている負の歴史が真っ向から取り上げられている。米国の傀儡である日本の姿などは現在にもそのまま当てはまる。それらの題材が救いのない物語に展開されていく。情け容赦がないこと著しい。読みながら幾度となくボディブローを食らい、うめき声を上げずにいられなかった。
 33年前の「週刊少年マガジン」はこういう作品を連載する雑誌だったんだなあ。隔世の感。赤松健氏に読ませてみたい、なんて大きなお世話か。

 「主人公と恋に落ちるお手伝いの少女ユキ」という登場人物は、『F』(六田登)よりもこちらのほうが先です。なんか他の漫画にも出てそう。